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「見たな……」
目に掛かる金色の前髪の隙間から、射抜くような鋭い視線を向け、赤く濡れる口を開く。
「……ひっ!」
撮影者は驚きに引きつった声を上げた。すぐに背中を向け、その場から走り去っていく。
撮影はまだ続けられたままで、映像は激しく揺れる。逃げる足音、追い掛けてくる足音が聞こえ、緊迫した状況が分かる。
路地から出たところでぶつりと切れ、そこで動画は終わった。
最後まで見た私は理解する頭が追い付かなくて、言葉を詰まらせる。
もしこれがCGとか特撮だったなら、よく出来たものではあるけれど、映像を見る限り撮影者の恐怖は本当だったように思う。
「最初撮影者は興味本位とかじゃなく、これは何だと思いますか? って感じでSNSに乗せてしまったんだって。そしたら一瞬で炎上。動画も瞬く間に拡散されちゃって、これは本物だ、作り物だって論争も起きる程になって。でもここまではよくあることって言えばあることじゃん? 芸能人とかも不用意な発言で炎上しちゃうことってあるから。けど、これが本物だって言われる要因って言うのが……」
灯路は途端真剣な顔をする。それに呑まれ、胸がドキドキとざわめき出す。
「元の映像って、今は削除されてないんだよ。だから俺が保存した映像も拡散されたひとつなんだけど。撮影者が上げて削除した間てたった10分程だったんだって。見てたのに途中で見れなくなったって言う人も多かったらしく、その中で撮影者と話してる友人がいて、映像が削除されるほんの前に『俺、ヤバいことしちゃったかも……。もう戻って』で通話は切れ、そっから繋がんなかったんだってさ」
「……撮影者さんはどうなったの?」
「それがさ、その友人の話なんだけど。3日ぶりにようやく通話が繋がって何があったのか聞いたら、『話せない。話せば殺される。でもひとつだけ言えるのは、もう関わりたくない』って言って、その後……亡くなったんだって」
「え…………」
余りに予想外の結末に、それ以上は何も言えなくなった。
「そう言うことがあって、この映像が本物だって言われてる。もちろんヴァンパイアなんて架空の生き物で存在するはずはないんだけど、この映像があるんだから一概にいない、とも言えないよなって」
「そう……だね……」
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