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「なんでキスなんかするんだよ……俺の事タイプじゃないって、あんた言ってたじゃないか。ゲイってのも嘘なんだろ? ノンケのくせに、簡単に俺にしとけとか言うな……!」 「ゲイかどうかなんか関係あるか。作り話に同情して初対面の人間を家に泊めちまったり、俺が気まぐれにやったものを、家の鍵につけて大事に持ってるようなどんくせえやつ、惚れるなってのが無理な話だろうが」 「そっ、そんなのめちゃくちゃだ……っ!」  抗議の言葉は、荒々しいキスに呑み込まれた。まだ受け入れるとも言っていないのに、拒絶されるなんて思いもしないのだろう。  どこまでも非常識な男だ。だけどどれだけ腹を立てても、嫌いにはなれなかった。それどころか、汗の匂いのする男の体をぎゅっと抱き返してしまう。 「――おい。お前も俺を好きなんだよな?」  キスの合間に訊ねられ、思わずじろりと睨みつける。 「信じられない……。この状況でそんな事聞く? どっちがどんくさいんだよ」 「後からブーブー言われないように、確認だ」  本庄は不敵に笑って、腰を抱く腕に力を込めた。ふわりと体が浮き、有無を言わさずリビングへ連行されてしまう。ソファーの上に放り投げられるかと思ったら、意外にもそっと降ろされた。  芦屋を見下ろしながら、本庄が衣服を勢いよく脱ぎ捨てる。服の下から現れた裸体は見事な逆三角形で、思わずまじまじと眺めてしまった。 「なんだよ。初めてはベッドがいいって?」 「……いや、ここがいい。ここ、あんたの匂いがするし」  ソファーからは、微かに本庄が吸っている煙草の匂いがした。すんと鼻を動かすと、圧し潰すように体の上に乗り上げてくる。 「ぶっ! お、重っ……」 「今ので完全に理性飛んだぞ。責任取れよ?」  至近距離で見つめられ、黒い虹彩よりも青白い白目に視線が引きつけられた。野人みたいな男のくせに、濁りのない瞳は透明できれいだ。舐めてみたいと思ったら、逆にべろりと頬を舐められた。舌先で上唇をくすぐられ、薄く口を開いて舌を中へと迎え入れる。  舌の動きをなぞるように、無遠慮な手のひらがシャツの中に潜り込んでくる。外からきた本庄の手は、驚くほど熱かった。きちんと切り揃えられた爪で、胸の小さな尖りを弾かれ、んんっとくぐもった声が漏れる。 「感度いいな。ここを弄られるの、好きか?」 「好き……」  素直に認めると、本庄は二本の指で小さな粒を摘まみ、くりくりと捏ね始めた。口の中を蹂躙する舌はどこまでも傍若無人なのに、肌に触れる手つきは慎重だった。柔らかな指の腹で乳嘴をふにっと潰され、甘ったるい喘ぎが漏れる。意地悪をされながらドロドロに甘やかされているような、奇妙な感覚だ。 「ん……」  あまりの心地好さに、芦屋は伸び上がって自ら男の首に腕を回した。体が密着し、キスがいっそう深くなる。陶然と男の舌を味わっていると、不意に下肢に硬いものを押しつけられた。兆し始めていた中心を、本庄の雄が煽るように擦り立ててくる。 「っ、ちょ、ちょっと待って!」  慌てて唇を離し、男の胸を手で押しやる。このままでは呆気なく果ててしまいそうだ。 「――なんだ?」 「言ったと思うけど、俺誰かとこういう事するの久しぶりなんだよ。だからその、ちょっと体が過敏になってるって言うか……」 「気持ち良過ぎて今にもイキそうだって、素直に言えよ」  言いながら、ぐっと強く突き上げられた。
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