7 猫のユズが初めて懐いた女性(SIDE 政宗視点)

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7 猫のユズが初めて懐いた女性(SIDE 政宗視点)

 俺の名前は政宗(まさむね) (ぜん)。猫のユズを溺愛する飼い主だ。資産家の祖父を持ち商社に勤務する俺は、金にも女性にも不自由のない独身生活をこれまで満喫してきた。  愛猫のユズとラブラブな一匹と一人と暮らしをしていたが、猫のユズは家政婦が閉め忘れた窓から脱走し行方不明に!?。ユズを必死で探したが…この半年、どうしても見つからなかった…。   ユズは不思議な猫で、なぜだか女性に懐かなかった。家政婦の女性にも誰一人として懐かず、家に女性がやって来るとストッキングをビリビリに破いてしまうのだ。器用なことにストッキングだけを破き怪我はさせていなかったが。  そんな猫のユズがやっと見つかった晩は喜びで涙が溢れた。驚いたことにユズを保護してくれたのは若い女性だった。  最初は猫のユズが初めて懐いた女性に単純に興味がわいた。   ゴージャスな肉食系女子ばかり見てきたので、地味だが清楚で初々しい柚子に好感を持った。それに整った顔立ちに磨かれていない原石のような彼女を見たとき、傲慢にも俺なら彼女を磨けると思った。  彼女から目が離せなくなったのは猫の所有権の話し合いが難航していたときだ。猫のユズを抱っこして彼女が破顔した時、俺は目を奪われてしまい暫く言葉が出てこないほどに、その光景に見とれてしまったのだ。  逆プロポーズをされた時は、驚いたが内心はガッツポーズをした。いい大人ががっつくのは恥ずかしいので…、表情筋に力を入れ平静を装うのにどんなに必死だったことか…。  彼女の気が変わらないうちに婚姻届けを出してしまおうと、翌朝は猛烈に急いで行動した。早朝には友人の田嶋を叩き起こして、証人のサインをさせたほどに。    怒涛のような最近の日々を振り返っていると、目の前に夜の街並みに溶け込むようにこじんまりとしたバーの入り口が見えてきた。   「よぉ、待たせたな田嶋」  俺は行きつけのバーの扉を開けると、田嶋に声をかける。 「今日はお前が奢れよ禅!」 「結婚したんだって、おめでとう政宗さん」  独身貴族の田嶋とバーのマスターとが振り返り、話を聞きたそうに俺に興味津々な視線を向けニヤニヤしている。  この独身者たちは俺が突然に結婚したことが不思議で堪らないのだろう。 「この間は叩き起こして悪かったな田嶋」  勿体ないから柚子のことも独身婚のことも、今夜はまだ田嶋には話してやらないつもりだ 
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