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8 一匹と二人暮らしとキュンキュン
一匹と二人暮らしが始まって二週間ほどが経った。
政宗さんと一緒に暮らし始めてわかったことがある。それは甘くて蕩けそうな声と顔は、猫のユズ専用ということ。ちょっと寂しくもあるけど、ホッとした。
あんな顔で毎日見つめられたら心臓がもたない…。私へは普通の笑顔で十分だ。というか普通の笑顔ですら神々しくて眩しい。
広い一軒家の家事は思いのほか大変ではなかった。というのも乾燥まで全自動の洗濯機に食洗器に、ハンガーに掛けたままで使用できるスチールアイロンやロボット掃除機など、最新の便利家電が完備されていたから。
庭や玄関の照明も暗くなればセンサーで自動で点灯だし、カーテンや雨戸もボタン一つで自動開閉。政宗さんの快適を突き詰めたら、この一軒家に辿り着いたそうだ。
私には勿体ないほどの環境だが、家事が苦手な政宗さんは半年前までは家政婦さんを雇っていたらしい。
私は洗濯したタオルをキャビネット収納しようと廊下に出た。するとそこには恍惚とした表情で猫のユズをモフる政宗さんが!?。
「きゃっ!?」
私は思わず悲鳴を上げてしまう。素っ裸の政宗さんが、猫のユズを両腕に抱いて廊下を歩いていたからだ。
「あ~悪い悪い」
猫のユズの脇腹を両手で掴むと股間を隠す政宗さん。だがその顔は全然悪いと思っていなさそう。
「猫は腰巻じゃありませんよ、股間を猫のユズで隠すのはやめてください~!?」
目のやり場に困り、恥ずかしくて赤面してしまう私。なのに私の瞳は、鍛えられた美しい体から目が離せない…。
「なら、隠さない!」
開き直るように堂々とそう言うと、猫のユズを腕に抱きあげる政宗さん。
真っ裸で猫を抱っこしているので、再び股間のパオ~ンが丸見えになり、私は悲鳴をあげた。
「マッパで猫をモフるのこそ至高!、柚子も一度やってみるといい」
「猫をモフる至高はわかります! でも…ソレは絶対にやりません!」
顔を極限まで真っ赤にした私がプルプルしながら叫ぶと、政宗さんは笑いながらお風呂場のほうへ歩いて行ってしまった。
私が気がつかなかっただけで、政宗さんと猫のユズとの真っ裸スキンシップはデイリーのようだ。
猫飼い主は多かれ少なかれ猫の溺愛行動を持っている。私だって猫のユズを毎日のように猫吸いしているし、文句を言うつもりはない。でもさっきのは、絶対に私のことをからかって遊んでたよね~!?
筋肉質で引き締まったお尻まで、余すところなく見てしまった政宗さんの全裸。私は顔が火照り暫くの間、心臓のドキドキが収まらなかった。
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