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2 男は猫を飼っているガードの固い女より、猫みたいに甘えてくる女が好き
これが、この現場に至るまでの私の怒涛の日々だ。そんな風に私が脳内で振り返って混乱を整理していると、沈黙を破るように美優が勝手に話始めた。
「このベビードール可愛いでしょ、忍君が買ってくれたんだよ~」
そう言うと美優はベットの上で、フリルのついたシースルーのベビードール姿で猫のようなポージングを取った。ベビードールとセットなのか猫耳のカチューシャまで頭につけている。そして「にゃんにゃん」と媚び声を出してお道化だす美優。
「ふざけないで!」思わず出してしまった私の大声に、忍君が眠そうな目を擦りながら声を出した。
「あれ柚子? なんでいんの?」
どうやら寝ぼけているらしく、ベットに横になったまま目だけ開けて、とろ~んとした表情をしている。
「ねぇ忍君、言ってくれたよね? 猫を飼ってる柚子ちゃんよりも、美優のほうが可愛いくて癒されるよ!って」
ようやくハッキリ目が覚めたのか、忍君は驚いてガバッと裸の上半身を起こす。私と美優を交互に見て、なぜ二人が一緒にいるのか分からない!?という顔をして困惑しているようだ。
その様子を見て私の頭の中に、眠っている忍君の枕元で、忍君のケータイを弄る美優の姿が浮かんだ。ラインのメッセージの既読も、「OK!待ってるよ」の顔文字も恐らく美優の仕業だ!。私は頭に血液が逆流するような怒りを覚えた。
「ご奉仕が足りないから柚子ちゃんは振られちゃうんじゃニャいかな~? 忍君さみしいって言ってたよ、家に猫がいるからって泊まっていってもくれないって~」
お道化たように馬鹿にしたように、シクシクと泣きまねをしてみせる美優。
「それは猫が病気で…」
私が飼っている猫は、古アパートの庭に半年ほど前に瀕死の状態で現れた迷い猫。雌だったので花子と名前を付けた。拾ったときは薄汚れ痩せて怪我をしていた。獣医さんに連れて行き手術に入院に通院。元気に回復したのはつい最近だ。そのことは忍君だって知っているはず…。
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