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あれだけ喋ったのに、まだ何か物足りない気がする。
「じゃあ、また明日な!」
「ん、また明日な!気を付けて!」
別れの挨拶をして、陽太の背中を見送る。
フと、ペットボトルが気になった。
……確か、階段を下りる男の子の絵だったよな。
夏限定の普段とは違うイラストがあったのを思い出しながら袋から取り出す。
「あ!」
慌てて道路の向こうを見る。
小さくなった陽太の背中がまだ見えた。
その背中を捕まえるように俺は走った。
「陽太!!」
大きな声が届き、陽太が足を止めてくれた。
俺の手に空のペットボトルを見ると、照れた様に笑った。
……あぁ、そうなんだ!じゃあ、良いのかな?良いんだよな?!
「あ、あのさ!明日!図書館で一緒に勉強しない?」
俺の言葉に数秒固まった陽太が、次の瞬間、満面の笑みで
「よっし!時間の限り一緒に居ようぜ!!」
嬉しそうに答えてくれた。
手に持った空のペットボトル。
そこには空になったら一枚の絵が完成する仕掛けが施してあったのだ。
階段を下りる男の子の向こうに女の子が居て、そこに小さな文字が――。
【もうちょっと話したくて、少しだけ遠回りして帰る】
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