コどもとヨミの友達

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1  小さな頃、同い年くらいの不思議な友達がいた。名前は、コヨミ。物心ついた時にはすでに一緒にいた友達。雪見大福みたいに真ん丸で真っ白で、少し茶髪の長い髪の毛の女の子。外見的な部分は、言葉どおり私と瓜二つで双子のようだったが、性格は私とは正反対で、おとしやかで優しい女の子だった。  コヨミは、この世界の住人じゃないのでは? と疑うくらい、何もかも不思議だった。体温はあるものの感じにくいが、冷たくもなく、生暖かいような感じがした。それに、いつも同じふわふわの白いワンピースを着ていた。  中でも一番不思議だったのは、気が付くといつも家の中にいたことだ。さらに、主に見かけるのは、鏡のように光を反射して、物が映りこむ場所ばかりだった。  そんなふうに、どこからかひょっこり出てきて、一緒に大人たちには内緒のアソビを毎日していた。  兄弟のいない私にとっては、格好の遊び相手だった。年も近いし、祖母のように何かを強要せず、ただ優しく、遊ぼっと声を掛けてくれた。容姿も相まって、私とコヨミは双子の姉妹のように毎日遊んだ。コヨミが居れば、寂しくなかった。  ただ、コヨミがどこに住んでいて、いつ、この家に入ってきているのかは分からなかった。  祖母に聞いても、見ていない、知らないと言っていた。そもそも、コヨミという人物はこの世界に存在していないとも言われた。挙句の果てに幻だろうとか、気でも狂ったのかとか散々な言われようだった。  コヨミ本人に聞いても、いつか教えてあげるし、連れていってあげる、とにこやかにかわされてしまっていた。  ちなみに、両親は仕事で海外にいるので、家にいない。よって、聞いても意味がない。  当時は、コヨミがまだ言えないというのなら仕方がない、と思っていた。それに、あまり興味もなかったから、詮索しなかった。幼心にこれ以上踏み込んではいけないと思っていたからかもしれない。  それに、そんなことを知らなくても、コヨミは私の一番の友達だった。何より、大人なんかよりも信用できた。コヨミは大人と違っていつも正しかった。何より、私をちゃんと見てくれていた。人形みたいな顔をした大人より、理路整然としていて、正しくて、本当のオトナより大人っぽかったし、いっぱい構ってくれた。それが何より嬉しかった。   きっと、自分の親の前より笑っていたし、幸せだった。  けど、小学校に上がると、外の友達を作るどころか遊ぶことも、外に出ることも、祖母の目がある時はできなかった。貴女のためという名目の監禁だった。  辛かったし、外に出たいと何回も思った。好きでもない勉強を無理やりやらされ、些細なミスでも酷く叱られた。  極め付けは、学校の教師にケチをつけて、学校をやめさせられた。そして、家庭教師という名の看守を付けられ、勉強という名の作業をさせられた。  勉強中些細な間違いを起こすたびに、お仕置きを受けた。夏でも半袖が着れないくらい、毎日傷だらけだった。祖母に相談しても、貴方が悪い、の一点張りで話を聞いてもらえなかった。  そんな状況でもなんとか耐えることはできた。  コヨミが毎日会いに来てくれたから。  私を慰め、こっそり外に連れ出して、ばれないように遊んでくれた。それが、私にとって唯一自由な時間で、自分らしくいられる瞬間だった。  しかし、そんな些細な幸せも失われてしまった。  コヨミが突然会いに来てくれなくなった。  いつ、どのタイミングとか、きっかけとか、理由とかも分からなかった。  突然、コヨミは会いに来てくれなくなった。  それからの日々は、まるで砂を噛むように空しく、輝きも色もない世界だった。すべてにおいて、何も感じない。あんなに嫌いだった勉強も、祖母の躾という名の暴力も、ただの流れ作業に過ぎなかった。
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