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明るく賑やかだった夏が終わり、リンの嫁入りの日がやってきた。
「リン、おめでとう」
とユキが花の首飾りをりリンの首にかけた。
「ありがとう」
とリンは頬を染めて微笑んだ。
「リン、婚儀まではまだ時間があるから草原に行こう」
と、ハナがリンの手をとった。
緑が広がる森の中を3匹は走る。
岩を登り、木々の間を駆け抜け、木漏れ日で光る小川を飛び越える。
「見えた!森の出口!」
ハナが大きな声で言った。
3匹が森を抜けたと同時に、バサバサバサと鳶や梟をはじめとする森に住む鳥たちが水の入った手作りのシャワーを持って飛び立った。
夏から秋に変わろうとしている草原には彼岸花が咲き誇り、トンボや蝶が舞い、森の仲間たちが集まっていた。
「虹だ……虹だわ!凄い!」
鳥達が降らせた雨は陽に照らされ大きな虹となって湖に映り、虹のトンネルとなった。そして、その真ん中には優しく微笑んでいるリンのお婿さんの姿があった。
「リン、行こう」
ハナとユキは嬉しさで泣いているリンと手を繋ぎ、虹がかかる湖までやってきた。そこで待っていたリンのお婿さんがリンの頭に花かんむりを乗せて
「一生をかけて君を守り、幸せにするよ」
と告げリンの手を暖かく包んだ。
「はい、私もっ」
とリンは頬を赤くして幸せそうに応え、秋風がそよぐ草原には拍手が響き渡った。
その日の夜、綿帽子をかぶった白無垢姿のリンはお婿さんと一緒に狐火が灯る道を歩み、生まれ育った森に別れを告げた。
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「昨日、晴れてたのに雨が降ったね。その後の虹が綺麗だったなあ」
「昨日夜、山の方で光の行列が見えたらしいよ」
「キツネの嫁入りかな?」
〜リンの嫁入り〜
fin.
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