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「あっめぐ」
先に俺に気づいて、めぐを起こしたのはあきらさんだった。
「ん?」もう半分寝ている目をこするめぐ。
「あっふーと君」
「もう、弱いのにこんなに飲んで」思わず眉間にシワがよってしまう。あきらさんに寄りかかっていたら、眉間のシワでは済まなかっただろう。でも、めぐは俺一筋だ、壁にもたれて、横に倒れないよう頑張っているのがわかる。
「めぐ帰れる?」
そう聞きながら、めぐの頭をポンポンするあきらさんにいらっとする。
「ちびたち待ってるぞ」そう言ってめぐの手をとる。子供たちをたてにするのはずるいけど、あきらさんにお持ち帰りとか、とまりにこられても困る。
「あ うん、ふーと君ありがとう」
酔うととろとろになってしまうことを思い出して、ため息が出る。他の男の前で、こんなに成るなよ。
立ち上がって俺に寄りかかる。安心しきった顔を見たら、いらだちも消えてしまう。
「めぐまた連絡するな」そう言ってめぐの手を握ろうとしたあきらさんに思わずくってかかってしまう。
「勘違いすんなよおっさん」
めぐはもう、まどろんでいて、聞いていないだろう。
「めぐが選んだのは俺だから」
あきらさんはちょっぴり驚いた顔をしたけど、
「ずいぶん余裕無さそうじゃん」と言ってきた。
「あんたみたいなのがいるから、俺はいつも全力なんだよ」
そうだ。めぐはちっとも大人じゃない。いとこだとしても男と二人でこんなに酔っぱらって…。だから、いつも俺はめぐを守らなきゃならない。
「でも、めぐには俺しかいないから」
俺は言葉とは裏腹に、彼に丁寧に頭を下げて、その場をあとにした。
車の中でもめぐは上機嫌だ。めぐなりに気をはっていたんだろう。俺に会えて解放されたんだろう、歌とか歌って、自由すぎんだろ。
「ふーと君」
「なに?運転中だから、」
「ごめんなさい…」いやテンション下がりすぎ(笑)
「ちゃんと座ってて、もうすぐ着くから」
「うちついちゃうの?」いや十代か!
「つくよ、お母さんしっかりして」
わざと「お母さん」といってみる。
「うん、しっかりしてる」いやいや、また愛奈にネタにされるパターンだな(笑)。
「その前にちょっとだけ…」そういうと、信号待ちを狙って、めぐが急に俺のかたに手を掛けて、ほほにキスされる。
とっさのことで心臓が早くなる。
「青だよ」わかってる、わかってるよ。
どうしよもなく隙だらけなのに、俺のことはこんなにも振り回してくる。
「ねぇ ふーと君照れてるの?」
少しふかしてしまった俺をめぐが覗き込んでくる。
「バーカ、勘違いすんなよ」
そう言ってすねるめぐを横目に車を走らせた。
家についてもドキドキは収まらず、めぐの寝顔から目を離せない。
完全にオフモードのめぐが俺の腕をつかんで眠っている。どんだけ俺のこと好きなんだよ。そう思ったあとに、「勘違いすんなよ」
今度は自分に向かって自嘲した。
いや勘違いでもうぬぼれでも、めぐは俺だけだと思っていいよな?
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