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あの人の話
わたし、松浪 結香が好きなのは学校の先生をしている男
さわやかで行動力のある、いわゆる好青年だ
名前は橋元 準
彼には忘れられない女がいる。
それはわかってるけど、でもわたしだって準君のことが好き…。
どんな人かはしらないけど、一度酔った時に『とても可愛らしいひと』だと言っていた。
酔っているせいか、とろけそうな顔をして、遠くを見ていた。勝てないかなと思っていたけど、その人には彼氏がいるってある日知ってしまった。
じゃあ、私にもチャンスあるよね?
だって最近は結構な頻度で一緒にいるし。
私たちは社会人サークルに入っていて、土日や連休は準君も私もほぼ皆勤賞でサークル活動をしている。
きっと、準君は、彼女を忘れるために、サークルにでてんだろうなぁ。と思っても、それは私にとってはチャンスだよね?
ある日サークルのバーベキューをすることになって、運良く私と準君は二人きりで買い出しに出掛けることになった。
これってデートみたいだなぁ。
二人であれこれ決めながらの買い物に浮き足だっていた。
けど、ふと彼の足が止まる。
「?」不思議におもってみあげる。
すると、彼の視線が少し遠くを見ていた。
それは、私が見たことのない、切なくて苦しくて、でも幸せそうな顔で…。
胸騒ぎがして彼の視線の先を探してしまう。
女の勘はすごい。たくさんいる買い物客の中から、彼が見ている女がわかってしまう。
は?
一瞬動揺する。
もう一度彼の視線を確認する。
間違いない あの人だ。
ちょっと驚く。
だって、普通におばさんじゃん。
絶対年上だよね。
あんな人好きなの?
とか、失礼なことまで考えてしまう。
勘違い?いやこの表情は、好きな女を見ている顔でまちがいない。
準君をいつも見ているからわかってしまう。
「あっ!先生?」
その女の人は、準君に気づいて、軽く会釈する。
「小口さん」
彼も答えるように、会釈をする。
何その顔。だらしない。
「やだ 先生。もう小口じゃないんですよ。」
え?
「旧姓に戻ったんで、菊池です」
と笑った彼女に
「あっごめんなさい。つい…」とか本気で照れている準君。
もしかしてバツイチ?
そんなことを考えていたら、菊池さんが私に気づく。
驚いたように、慌てて
「あっ、ごめんなさい、私本当にお邪魔しちゃって、いゃぁね」とお詫びをした。
私もなんとなく
「いえ」とか言ったけど、いろいろ情報がおおすぎる。
なのに、さらにそこに私を混乱させる状況が被さる。
「おい、めぐ。勝手に動かないで、またはぐれちゃうよ」
準君ほどじゃないけど、棚の裏から、イケメンが出てきて、菊池さんの頭をポンポンした。息子じゃない…よね?
だって、仕草は完全に彼氏のそれだし。
「…あっども」そのイケメンくんは、準君に気づいて、ちょっとあからさまに不機嫌な顔になり、一応って感じで、頭を下げた。
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