ふーと君は

2/5

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「もしもしめぐ?」 昼少し前にふうと君から電話が来た。 普通だ。 「うん、お疲れ様」 「悪いんだけどさ、いったん俺んちきてくんない?」 「あ うんいいけど」 「よかった、じゃ」 用件だけ言って電話は切れた。 急いでふうと君のアパートに向かう。 チャイムを鳴らすとすぐに彼は出てきた。 よかった、病気とかけがじゃないみたい。 じゃぁなんでランチの予定がアパートになったんだろ? 「めぐ、入って」 彼に手を引かれて、部屋に引っ張り込まれる。 「あ ちょっと」 そういう間に鍵をかけられて、乱暴にソファーに押される。 「ふうと?」 思わず呼び捨ててしまう。 「ごめん、とりあえず」 は? 戸惑う私をしり目に、ふうと君がTシャツを脱いで覆いかぶさってくる。 ふうと君からボディーソープのにおいがふわっと香る。 あぁもうシャワーしたんだ。のんきにそんなことを考えてしまう。 自分のシャツに手をかけられてふと我に返る。 「あ ねぇふうと君、ちょっと」 一瞬細められた目と視線が合うけど、すぐにそらされて首筋にキスをおとされる。 焦れるように私の服をはがしながら、深く息をしたかと思うと、余裕のない表情をみせる。 そりゃ私たちは付き合ってるし、好きな男に求められてうれしくないわけじゃない。 でもなんでこうなってるのか、どういう状況なのかまったくわからなくて戸惑う。 「ねぇ ふうと君ってば、どうしたの?」 そういって、軽く彼の肩を押して、彼の顔をみようとする。 「なんで?」 え? 「ダメなの?」 逆に彼から質問されてこっちが驚く。 「いや…だめじゃ…ないけど…」 そういえば前にもあった。こんなふうに急に求められたこと。 その時は確か、私がいとこと飲みに言った次の日だ。 もしかして、これって…ふうと君なりの独占欲?嬉しいけど‥。 でもそうだとしたら、今回は何も思い当たらない。 「じゃぁいいよね?」 「あ え…」 もう止めらんなそうだな、そんなふうに考えてから私はもう考えるのをやめた。 だって、私だってふうと君の甘い声や乱暴なようで、やさしく求めてくれるそのしぐさに、あらがえない。 肌と肌をじかに触れ合わせたら、もうふうと君に溶けてしまいたいと思う。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加