喧嘩

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喧嘩

「…もうまた同じことじゃん!」 めぐは圧倒的に自分に自信がない。 年上だし、かわいくないし、 スタイルだってよくない。 いつもそう言って、俺の横を少しずれる。 俺の友達ははっきり言って、めぐとは真逆のタイプが多い。 陽キャだったり、リア充なタイプのやつが多い。 だから、友達がいるとこには飲み行かないし、 偶然会っても、ペコっと挨拶をして、 そのあとはうつむいている。 普段はそんな気になんないけど、 ときどきそれがいらいらする。 なら痩せれば? ならメイク変えれば? そんなふうに思ってしまう。 確かに、俺と付き合って、 めぐは変わったと思う。 努力をしてるんだろうとは思う。 でも、 そんなふうに俯かれると、 俺はめぐを選んだんだからいいじゃん! と思ってしまう。 さっきもそうだ。 たまたま会社の若い子に会った。 一応、にこにこはしていたけど、 その子たちと別れた後に、 「ごめんね、なんか」 とめぐがつぶやいた。 「何が?」 何となくわかってた。 どうせ,『私みたいな女と一緒で恥ずかしかったでしょ?』 とか言い出すんだ。 「なんか、ふーと君に恥かかせた気がして…」 ほら…。 「…はぁ」 俺のため息に、めぐは不安そうな表情になる。 「何回いわせんだよ!俺はめぐがいいの!」 「…ご、ごめんなさい」 「…また同じことじゃん!」 というわけで、冒頭に戻る…というわけだ。 何となく、気まずい空気だ。 確かにめぐが悪いんだろうけど、 めぐの性格はわかってるし、 こんなに怒ることじゃないのかもとか考える。 でも、変わらないめぐもわるい。 そんなことを堂々巡りに考える。 俺の家についてもめぐも俺も話さない。 いや、話せない。 何となくいずらくなったのか、 「ごめんね、私、帰るね。」 と言って、自宅に戻っていった。 俺もそれを止めなかった。 俺もめぐに甘えているという自覚はある。 こういう時はめぐが年上なんだし、 自分のほうが俺に惚れてるって思ってるんなら、 めぐから歩み寄ってくれよ。 とか勝手に思ってしまう。
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