喧嘩

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夕焼けが少しずつよるのとばりに飲み込まれていく。 なんかむしゃくしゃして、 少しアルコールを口にする。 そう言えば最近仕事もないのにこの時間に、 1人でアパートにいることなかったな。 なんでもない一人暮らしのアパートが、 やけにさみしく無機質に見える。 めぐの家なら、新汰や愛奈の姉弟ケンカや、 めぐの笑い声が今頃は聞こえているだろう。 めぐが、『ふーと君』 と呼ぶその声とか、表情とか、 何となく思い出してしまう。 こんな喧嘩よくあることじゃん。 と思うのに、何となく胸に突っかかる。 俺が謝ることじゃない。 そう思うのに、…。 会いたい。 めぐは、めぐのほうが惚れてるって思ってるけど、 俺は、めぐなんか思いもしないほど、 めぐのことが好きなんだな。 そう思うと、少し笑ってしまう。 財布とカギとスマホをもってアパートを出る。 ピンポーン。 「はーい」 出てきたのは愛奈だった。 「あ、ふーと君。」 ちょっと眉毛を下げた。 「はいっていい?」 先手を打つ。 「いいけど…。ママいないよ」 と言って、中へ促してくれる。 「え?」 玄関に一歩踏み入れながら、俺は愛奈を見てしまう。 「とりあえず入ってよ」 愛奈に言われて、リビングに向かう。 「うっす」 あらたがアイスを食っていた。 「うっす」 俺は、とりあえず麦茶を入れて、 あらたの向かいに座った。 あらたの隣に、愛奈が座って、 「あのさ、喧嘩でもしたの?」 と直球で聞いてきた。 「…はは、うん、まぁ」 俺も、隠さずに話す。 「ママ、涼子さんに呼ばれて、お店行っただけだよ。すぐ帰ってくると思う。」 涼子さんとは、めぐが前働いていたスナックのままだ。 「そう…か。」 「お風呂入ったの?」 ちょっとへこんでる俺に愛奈はお母さんみたいに聞いてくる。 「いや、まだ…。」 「じゃぁさっぱりしておいで、」 ほんと、お母さんみたい。とちょっと笑ってしまう。 「今、おかんみたい!って思ったでしょ!」 とちょっと怒ったふりをする。 「…いや、ふふ…うんまぁ」 「もう!、私たちもうご飯食べたし、ふーと君おなかすいてるんだったら、適当に食べてね。」 「あぁ、うんありがとう。」 そう言うと、愛奈は新汰の頭をポンとたたいて、部屋にも入っていった。 「いってぇな」あらたは、舌打ちして愛奈を見送る。 「愛奈すげーな」 「おばさんみたいじゃん」 「そんなこと言うとまたケンカになるぞ」 「…うん」 少しの沈黙。 「おかんはああゆう性格の人だから…」 あらたがぽそっという。 「ふーと君イライラするだろうけど、でも、いやじゃなかったら、ちゃんと面倒見てやって…」 あらたはそっぽを向いてアイスの棒を加えている。 「うん、ごめんな心配かけさせて」 「まぁ…うん。いいよ」 そう言うと立ち上がって、棒を捨てて部屋に向かう。 「おやすみ」 と言い残して…。
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