喧嘩

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子供たちは、彼らなりにいろいろ考えているんだろう。 めぐがちゃんとしたお母さんなら、また違ってたろうけど、 めぐは子供と一緒だ。 だから、自分のことでいっぱいになってしまうこともよくある。 俺は、自分がこの家族の一部になっていることを感じて、 ひっそりとうれしくなる。 あぁー風呂入ってさっぱりしよ。 風呂入って、テレビ見たてけど、めぐは帰ってこない。 なんか疲れたし、部屋でゆっくりしよう。 そう思って、ベッドに体を投げ出したらいつの間にか眠っていた。 がさ… しばらくして、布団がすれる音がした。 …めぐ そう思ったけど、そこでまた変な意地を張ってしまう。 こちらから折れたくない…。 めぐもちょっと俺を覗き込んだ気配がしたけど、 自分の布団に入って、眠ったみたいだ。 「…ん」 少し寒いのかめぐが身震いした。 風呂上がりのいいにおいがする。 寝返りを打つとめぐはこちらに背中を向けていた。 少しすると、寝息が聞こえてくる。 ゆっくりとめぐに近づいて、めぐの体に腕を回す。 何やってんだ俺…。 寝てる相手には素直になれるって…。 めぐの手を探してそっと重ねる。 少し冷たいな。 ぎゅ。 え? 重ねていた手を逆に握られる。 起きてる? 驚いていると、めぐは俺の手を自分の胸元に導く。 俺の手もそれほど暖かくない。 ヒヤッとしたのか、ぴくッと動くめぐの体。 そのまま俺の手はめぐのふくらみの上に置かれ、 その上にめぐの手が重ねられる。 「…はぁ…」 めぐの熱っぽい吐息がもれる。 え?感じてるの? 俺の手を自分の胸にあてて感じてるの? 変態かよ。 俺は、手を動かさずにそのままめぐにゆだねた。 でもめぐは、それ以上何もしない。 ただそのふくらみと自分の手のひらで俺の手を挟んでいる。 そして、そのまま静かに寝息を吐き出し始めた。 え?何?これ何の拷問? 手を抜き取ることもできず。 めぐの思惑をはかることもできないまま、 俺もいつの間にか眠って、朝を迎えた。 「おはよう」 「はよっす」 いつもと変わらない朝。 「おう、おはよう」 子供たちに挨拶を返す。 「寝ぐせ、えぐ」 あらたが笑う。 頭に手をやると、確かに寝ぐせついてる。 「おはよ、顔洗ってきたら」 少しはにかむように笑って、めぐが言う。 「あ、う、うん」 「きも」 俺らの態度に、愛奈が悪態をつく。 「うるせーわ」 愛奈の頭を軽くたたいて、洗面所に行く。 顔を洗って、寝ぐせを直す。 夕べのあれ、何だったんだろう。 「あらた、早く食べて!」 キッチンから聞こえるめぐの怒声を聞きながら。 俺は自分の手を眺めた。
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