好きだよ

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俺はもう何も話す余裕はない。 マジで盛りの付いた猫か。 自分にツッコんでしまう。 めぐも何も言わずについてくる。 焦る気持ちで乱暴に玄関のかぎを開けて、 力強くドアを開けて、めぐを招き入れる。 扉を閉めて、鍵をかける。 突っ立っているめぐの背中を扉に押し付け、 めぐの顔の横に両手を“ダンっ!”とつける。 いわゆる壁ドンだ。 少し息を荒くして俺を見あげるめぐ。 息を整えながら、めぐを見下ろす俺。 ここがタイミング、というように、 俺はそっとめぐの唇に俺のを近づけるのと、 めぐが目を閉じるのが一緒だった。 チュっと軽くキスをする。 少し離れて、めぐの唇をもう一回見る。 はぁと少し短く息を吐いためぐ。 それを合図に俺は今度は深く、 少し激しくめぐをむさぼる。 「…ぁ…はぁ…」 わずかにもれるめぐの声。 それすらも吸収してしまいたい。 そんな俺のどん欲な欲望を知らないめぐは、 俺の背中に腕を回して、必死で俺に答える。 「…めぐ」 合間に呼んでみる。 そっと目を開けて、俺を見る。 しばしそうした後、 にっこり笑って、俺の髪をなでる。 「好きだよ、ふーと君」 ぽそっと、めぐの口から洩れるようにつぶやかれる。 その言葉は俺の耳から脳に響いて、 そこから全身に浸透していく。 「俺も」 思わずめぐを抱きしめる。 どうかしてる。 こんなにめぐは全部俺のものなのに。 それでもなお、不安になって、 めぐを縛り付けて、 よそ見をさせないように視界を奪って、 何もかも奪おうとする。 それでもめぐは、俺をまっすぐ見てくれる。 「ふーと君?」 「…」 「楓人?」 俺の表情をみようとして、 俺の腕の中でめぐがうごめく。 でも、見せてやらない。 「いや、俺のほうが好きだよ」 「—っ!」 こんなふうにストレートに言うのははじめただ。 驚いてるめぐの顔が目に浮かぶ。 すぐに、めぐの体の力が抜けて、 俺をしっかり抱きしめる。 「ありがとう」 やわらかい声に、俺もほっとする。 好きすぎて重なり合うだけじゃ足りない。 めぐの全部を知っていたい。 こんなに好きなこと、伝わってる? そう思いながらもう一度つぶやく。 「俺のほうが好きだから…」           2人の幸せは続く           お話はおしまい
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