どこ行ってたの?

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「もしかして、見てた?」 いたずらに笑うめぐにドキッとする。 「…」何も言えない俺に“図星?”と言わんばかりに驚いて、 「もしかしてほんとに見てた?」 と聞いてきた。 「あ、う、うん」と歯切れわるくなってしまう俺。 いや、なんで俺のほうが後ろめたいのよ。 「えーなんで声かけてくれなったの?あ、もしかして運転中だった?」 本気でふてくされてるめぐに、疑問ばかりが浮かぶ。 他の男と一緒だったじゃん?いいの? 俺が声かけたら、修羅場じゃない? 「あ、もしかして、一緒にいた人、気にしてる?」 思い出したように、めぐが前のめりになる。 ズバリ言われて、正直者の俺ははっきりと態度に出てしまう。 なのに、なんかにやにや笑ってめぐが答える。 「あのね。怒ったりしないで聞いてね。」 その前置きに、鼓動が早くなって、思わず唾をのんでしまう。 「何? 見られたらやばい感じだった?」 ついつい厳しめの声が出てしまう。かなりとげとげの声に、 めぐは慌てたように言葉を付け足す。 「まずくはない!まずくはないんだけど…」言いづらそうに言いよどむ。 「じゃ 何?」こんな言い方したくないのに…とげとげとした態度になってしまう。 「なんか、楓人君にとっては複雑な気持ちになってしまうかもしれないんだけど…」 もう悪いことしか思い浮かばない。でもめぐが浮気なんかできるわけない。 という気持ちも湧き上がって占めぎあう。 「早く言いなよ!」つい強い言葉になってしまう。 「ご ごめん」すぐに引け目を感じてしまうめぐをせかす。 「どこで見られたのか分からないけど、多分、若い男の人と一緒にいたんだよね?そのこと気にしてるんだよね?」 何も言わずにじっとめぐを見る。めぐは落ち着かない様子だけど、助け舟は出してやらない。そうだよ!そいつのことだよ! 「あの人ね、実はね、可南子ちゃんの彼氏なの」 「は?」思いもしない人物に変な声が出てしまう。 「可南子ちゃんね。楓人君をあきらめてから、すぐ彼にあったんだって」 めぐは自分のことのように嬉しそうに話す。 俺はまだ先が見えない話に、目を細めてしまう。 「はじめは、楓人君に振られてすぐなのに、彼を好きになってる自分に戸惑ったみたい」 可南子そんなこと気にしてたのか。 「でもかなり彼からアタックされて、楓人君を吹っ切るチャンスかもって思うようになったんだって。私はたまたま、2人が一緒にいるとこ見ちゃったんだけど 『中島さんには内緒にしてくださいって』言われちゃって…。なんか後ろめたい感じがするんだって。」 「そんなこと気にしなくていいのに…。俺は可南子の気持ちに答えられないし でも可南子にも幸せになってほしいとは思うから。」思わずそう言った後、めぐに言うことじゃなかったかなと思ってハッとしてめぐを見る。と、めぐは柔らかく笑って、 「大丈夫だよ。私も可南子ちゃんにもいい出会いがあるといいなって思ってたし、それに私もだけど、楓人君だって、可南子ちゃんがそんな軽い女じゃないってわかってるもんね?」そう言った。 その通りだ。めぐは俺の気持ちわかってくれてほんとに幸せだ。 「でも、可南子ちゃんの気持ちが他の男に移っちゃったら、楓人君は傷つくかなって思って、私も言えなかったんだけど…」めぐはさっきとは違って、いたずらな笑みを浮かべている。 「ショックだった?」少し俺のほうに身を乗り出して聞いてくる。
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