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デート
「買い物行ってくる」
俺のアパートの冷蔵庫を覗いた後めぐが言った。
平日の昼前。まだランチにはだいぶ早い。
「じゃ俺も行くからちょっと待ってて」
グレイのスウェットから黒のジョガーパンツに履き替えて、
襟のよれたTシャツを変えてパーカーを羽織る。
その様子をじっと見ていためぐ。
どうせ『なにが変わったのかわからない』とか思ってるんだろう。
ここはジェネレーションギャップ。スウェットでもジョガーパンツでも変わらない、と思うめぐと、部屋着と外着を分けた、と考える俺。
でも何も言わないで俺を見つめる。
「何?」そんなめぐにわざと聞いてみる。
「いや、かっこいいなと思って…」予想外の返答に顔が熱くなる。
「そ?」バクバクする心臓を必死で抑え込んで、何事もないようにめぐの頭をポンポンする。
「行こ」そう言ってさりげなく肩を抱く。
耳が少し赤くなってるのがわかる。ほんとめぐにはかなわない。
近くのドラックストアで少し買い物をする。
外に出ると少し先のほうにのぼりが見える。
「あれ?ここ喫茶店できたの?」
それを見つけてすぐにめぐが目をキラキラさせる。
「喫茶店っていうか、パン屋さんみたいだよ」
俺が言うとさらに目を輝かせる。
「寄ってみる?」もう『寄りたいです』と顔に書いてあるけど、一応聞く。
首を縦に振って俺の手を握る。
よっぽどうれしいんだな。自分から手をつないでくるなんてめったにないし。
「おなかすいてたの?」イジワルして聞いてみる。
「…そ そうじゃないけど」
恥ずかしそうにしてるのもかわいい。
「なんか カフェってテンション上がるじゃん」
知ってる。コーヒーも好きだしね。なんか贅沢してる気もちになるのがいいんだよねっとめぐは微笑む。
「お昼ぱんにしよっか?」
「うん」
ほんとに年上かな?愛奈のほうがよっぽど大人に見える。
コーヒーとクッキーを買ってイートインであろうテラスに座る。
「いただきます」
そういってゆっくりとコーヒーを味わうめぐ。
「こんなゆっくりデートするの久しぶりだね」
そういうと、
「え?」と俺を見るめぐ。いや、いったい何に驚いてるの?
二人きりでのんびり過ごすの久しぶりだよ?
「…デート…」その言葉をかみしめるようにつぶやくめぐ。
いやそこ?二人でこうして出かけたらこれってデートでいいよね?
ていうか、俺たち付き合ってるしさ、これって—
「デートだよ」
そういって少し近ずくと、赤くなってうつむく。。
「めぐはなんだと思ってたの?」買い物とか言うなよ
「…デート…だね」
そういって嬉しそうにほほ笑む。
あほかな
この子は
今日のお昼は少し遅くなってしまいそうだ…。
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