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「シュウ、来てくれてありがとう。ってどうしたんだ?」
「どうしたも何も、呼んだからにはちゃんと話を通しておいたらどうなのさ」
「へ?」
「へ?じゃないよ。もうボケが始まったみたいだね、やれやれ」
「な、なんだと!?」
年を取れば変わるものだよ。悲しいことにね。
「子供が出入り禁止ってどうなの」
「いやほらそれはアレだ、もう少し分別がついていないと何があるか分からないんだし。というかシュウが例外なだけだろ」
「なに、僕が悪いわけ?」
「い、いやそうじゃない。そういうつもりはなくて、その、伝達不足で迷惑をかけたな、すまん」
「ん」
そう。僕は一切間違ったことはしてない。
だけどそんなに幼く見えてしまうのかな。もうちょっと服装を変えてみたりしてみようかな。
「それはやめとけ。今のままが一番いい」
「何さ。おじさんにそんなことは聞いてない」
「おじさん言うな!というかマジな話、そういう背伸びした格好なんてしてたら笑われるだけだからやめておいたほうがいいぞ」
「え、そうなの」
ま、まあ確かに子供が大人ぶっているところは微笑ましい感じがあるよね。
それならいっそのこと近寄るなオーラを出してみるとか。
「それもダメだ。死人が出る」
「じょ、冗談だってば」
「本当お前は、凄いんだか凄くないんだか」
「わぷっ。もぅ」
わしわしとちょっと乱暴に頭を撫でられる。
もう数十年の付き合いなのにこの扱い。まあ、嫌ではないんだけど。
その時、遠慮がちなノックの音が響いた。
マスターから目配せされたので頷く。
いいよ、別にそこまで秘密にしておくことでもないからね。
「し、失礼します。お飲み物をお持ちしました」
「おおっ。最近流行ってるっていうバナナシェイクってやつか
?」
「そうです。マスターよくご存知ですね」
「まあな。マスターたるもの常に最先端を行かないと」
「おっさんの若作りは結構きついよ?」
「うるせぇ」
「ふふっ」
どれだけ偉ぶったって僕はこの人が駆け出しの頃から知っているわけだしね。そんなに畏まらなくてもいいんじゃない?
「もらっていい?」
「ど、どうぞっ」
うん。流行りなだけあって美味しいね。
「あ、さっきは驚かせてごめんね?こんなナリだからああいう態度されるのは分かっているんだけど、ちょっとうるさい人がいたもんだからさ」
「いえ気にしてないですから」
「そう?まあこれから何かとここに来る機会があるかもしれないから覚えておいてくれると嬉しいかな」
「は、はいっ。心に刻んでおきます!」
いやそんなに気を遣わなくても。お姉さんが何だかいい顔しているからまあいっか。
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