原動力は甘いモノ

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「さてシュウ、お前に来てもらった理由なんだが──」 「なに?」 「いや、口にクリームついてんぞ」 「えっ!?」 慌てて手で口を拭おうと「お手拭きどうぞ」あ、はい。ありがとうございます。 この厳ついおじさんと一緒の場でケーキが出てくるなんて予想出来るはずないじゃないか。くそぅ、美味しい。 「そうしているとごく普通の子供にしか見えないな」 「むぅ」 「そう怒るなって。俺は良いと思うぞ、年相応の可愛らしさがあって」 うんうん頷く受付嬢のミリアさん。というかアナタが曲者なんですよ。甘くて美味しいものを用意してくるから。 「それで、用件はなんなの」 「ん、そうだったな。ミリア、地図を持ってきてくれ」 「かしこまりました」 はい、ついでに下げていただいて結構です。 え、お土産があるの?ありがたく頂戴します。 「本当ならシュウに頼ることなく解決させたかったんだが」 「いいよ。僕の力が必要だから呼んだんだよね?」 「そうだな。来てくれてありがとう、シュウ」 「今お礼を言っちゃうなんて、ライザーも年を取ったね?」 「ふっ。かもしれんな」 見知った仲が老いていくのはやっぱり寂しい。けれど、いつまでも僕を頼りにしてくれているというのは嬉しかった。 「お待たせいたしました」 「ああこれだ。シュウ、古龍種なんてのとは出会ったことはあるか?」 「ふぇ? あー、えっと、やたらと偉そうでよく喋るタイプのやつ?」 「……よく喋るのか、それは初耳なんだが。まあ、たぶん同じやつだろう」 「ふーん」 長生きしただけあって知恵がついているというか。 変に知識を身に付けたせいで自分たちが一番優秀なんだと信じて疑わない残念な生き物。 まあ確かに戦うのはちょっと骨が折れるんだけどさ。 「古龍種と思われる龍が現れてこの地で暴れ回っているそうだ。残念なことにうちのメンバーじゃあ返り討ちに遭うことは目に見えている」 「無理に追い払おうとしないほうがいいんじゃない?」 「シュウの言うようなやつなら良かったんだがな。何か恨みでもあるのか一向にその場を離れようとしないんだ」 「うへぇ」 年を取るほどに頑固になる。これ全ての生き物共通ね。 やろうと思えば出来るだろうけどさ、あの手の連中は心の底から負けを認めさせないと、数回叩きのめしたくらいじゃあ全然懲りないんだよね。 本気の本気になっちゃうかぁ。すっごく疲れるから嫌なんだよねぇ。 「報酬は」 「安心しろ。都中の人気スイーツ片っ端からかき集めておくからよ」 「全然足んない」 「なら行列必死の人気店の年パスも付けてやる。ミリア、店を厳選しておけ」 「は、はいっ」 「ん。それと、お肉は」 「心配すんな。国で一番の精肉屋を紹介するさ。持ち込みで調理もしてくれるぜ?」 「はぁ。そういうことはもっと早く言ってよね」 5年は遅いから。彼が聞いていたら死んだほうがマシと思うくらいの苦痛を味わっていたと思うよ? ふふ。ちゃんと内緒にしておくから心配しないでよ。 「心の底から申し訳なかった。あとは何かあるか?俺に出来ることでなら受け付けるぞ」 「いやいいよ。美味しいものが食べられればそれで」 「そこは絶対に約束するから!」 長生きしたら色んなことがあったけどさ、美味しいものを食べている時の幸福感はそれだけで十分生きる意味になるよね?
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