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「終わったよ、リル」
『終わったよ。じゃないっての。遅かったじゃないか。どうせまた誘惑に負けてきたんだろう?』
「うっ。ごめんなさい」
『それだけ甘い匂いを漂わせてたらすぐに分かるだろうが』
だ、だって仕方ないじゃん。ミリアさんが用意してくれたやつは入手困難なプレミアムロールケーキだったんだもん。
食に労は惜しまない。美味しいものを食べることこそが生きる喜びであると。
リルだって、分かるでしょ?
「ごめんごめん。お詫びの品を買ってきたからこれで許して?」
『まーたそう物で釣ろうとして』
「じゃあ、いらない?」
『いるッ!』
「ぷっ」
食い意地を張っちゃって。人のことを言えないじゃん。
『はぐっ。う、うまいじゃないか』
「ふふ。喜んでもらえて何よりだよ。ちなみにそれわざと骨付きで調理されてるんだって」
『ンガゥ?』
ガリガリボリッ。確か骨は食べられませんって聞いてたんだけど。
「骨まで味が染みてたみたいだね?」
『そんなわけあるかっ!ナゼ先に言わない!?』
いやだって、両手いっぱいの大きさのものがほんの数十秒でキレイになくなってしまうなんて普通思わないじゃん。
まあただの骨だから悪いことにはならないでしょう。リルの強力な顎にはあのくらいの硬さは何ともないのだった。
『フーッ。まあいい。ともかく美味かった。それは間違いない』
「ふふっ。それは何より」
『それで、これからどうするのだ?』
「えっと。古龍種をちょっと退治しなくちゃならなくて」
『なんだと?』
戦わずに済むのなら一番だけど、絶対に無理だろうなぁ。
プライドが本当無駄過ぎるほど高いんだもの。僕やリルの話なんて聞くわけないだろうね。
『図体ばかりデカイだけの連中か。フン。やってやろうではないか』
「どうどう。リルが本気出したら土地が更地になっちゃうからね?」
『シュウに言われる筋合いはないだろ』
「うぐっ」
そこはほら、キミたちは犬猿の仲だからもう見境なくなってしまいそうだからね?
「ええと、とにかく出来るだけ穏便に。退治が目的じゃなくて土地を守るのが第一なんだから」
『いずれにせよ叩きのめしたほうが早いに決まっている』
「……うん。そうだね」
話し合いで解決するならこんな自体になってないか。
そうか。そうだよねぇ。僕の考えが甘すぎたよ。
『礼の品はもちろんあるのだろう?』
「あるよ。ちゃんととびきりのやつをお願いしてきた」
『決まりだな。飛ぶことしか能の無い連中をさっさとぶっ飛ばして最高の飯にありつこうじゃないか』
「よーし、張り切って行こー!」
古龍種はこの世で1、2を争うくらい飛び抜けた種族。
だけど、そんなの関係ないね。
最高の甘味が待っているんだから、何が相手だろうと必ず負かしてみせるんだ。
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