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「それじゃ、約束通り行ってくるね」
「ああ……死ぬなよ」
「ふふ。当たり前じゃん」
えへへ。隊長さんにそう言ってもらえるとは思ってなかったよ。
『さて、ひと暴れしてくるか』
「こらリル。最初から全力出しちゃダメだからね?」
『む。何がいけないのだ?』
「僕たちの目的は古龍の脅威からこの地を守ること。討伐することが目的じゃないよ」
『うぬぅ。分かったのだ』
いつも心配するのはリル自身じゃなくてやっちゃった後のこと。何でもかんでも倒せばいいってものじゃあないですよ。
まったく、いつまで経っても血気盛んなんだから。
「古龍種っていつ振りだっけ?」
『ん、グラティオスの奴以来じゃないか?』
「グラティオス?あ、あぁ、えっと、30年くらい前にいたねぇそんなの」
『千年生きてきたとか言ってたな』
「うんうん、言ってた」
僕も無駄にながーく生きてきたけど千年はさすがにちょっとって思ったんだよね。
まあ彼らは寝ることが好きだから平気で年単位で寝ていられるらしいけど。
「倒しちゃったんだっけ、あのお爺ちゃん。いやぁ僕も若かったなぁ」
『自分より強い者に会って最期を迎えたいとか言っていたからいいだろう』
「だったね。お爺ちゃんなのにめちゃくちゃ好戦的だった」
今では笑い話だけど、さすが長生きしただけあって本当に強かった。
思えばあれ以来かな。全力を出すかもしれないのも。
この世に生きる種族の中でもっとも頂点に近い彼ら。気を引き締めないといけないね。
『ふん。奴にやられた背中が疼いてやがる』
「大丈夫?」
『大丈夫さ。ただあまり穏やかではいられないかもな』
「ん。分かったよ」
一対一だと正直分が悪かったかもしれない。そう思わされた相手。
リルの悔しさはよく分かるから一戦交えるのはもう決定事項かもしれないね。
もちろん生き残ったほうが勝ちみたいな馬鹿な真似はしないけど。
「行くよ、リル。あの約束は忘れていないよね?」
『ああ、もちろんだ』
相手のためにと命を投げ出す真似はしないこと。死ぬ時は一緒だよ。
二人で生きて笑って食べて寝て、また明日。ずーっと一緒に過ごしていくの。いつか迎える最期の日まで。
僕たちは死地へと一歩踏み出した。
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