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2.俺に起きた不思議な体験
2.俺に起きた不思議な体験
俺は妻文子に遺書を書いた。
が亡くならず、未知の世界に降り立った。
俺に起きた不思議な体験は、誰も説明できないだろう。
だから手帳に顛末を記録しようと思う。
私が、消えた瞬間、手帳も記録も消えてしまうかもしれないが。
俺は1945年8月14日、B29との空中戦で撃墜された。
ゼロ戦は垂直に落下し、地上に激突するはずだった。
操縦かんは重石のように動かなかった。
地表1000mで操縦かんが動いたので、俺は必至で操縦かんを手前に引いた。
ゼロ戦は緩いカーブを描いて、飛行場が見えた。
焼野原の中に飛行場があり、部隊の宿舎が点在しているはずだった。
だが、景色が違っていた。
地表は緑に覆われ、高層の建物が林立し、舗装された道路を無数の自動車が移動している。
どうなってるんだ。頭が錯乱しているのか。
俺はやはり死んだのか? と思った。
TVでは太平洋戦争のゼロ戦が〇飛行場に降り立ったと中継していた。
富浜署は、航空管制官から連絡を受け、20分後に、〇飛行場に駆けつけた。
日本国内の空港に着陸した場合は警察の管轄に移るという根拠から、〇飛行場は警察によって封鎖された。
〇飛行場に降り立ったゼロ戦の機体に、警察車両10台が駆けつけ、警官が銃を構えて取り囲んでいた。
警察官が近づいてきて翼に上がると、キャノピーを外から開けた。
俺はゼロ戦から降りた。
「私は○○航空隊青木勝一上飛曹(准士官)です」
俺は警察官たちに敬礼した。
「ふざけているのか。そんな隊はないぞ」
私服の警官が前に出て言った。
「私は、富浜署の須藤刑事課長だ。今から、お前を航空法違反で逮捕する」
須藤課長が言った。
「航空法違反? 何のことだ」
「ふざけてるのか? それとも薬をやってるのか?」
須藤課長が皮肉った。
俺は警察車両に乗せられた。
ゼロ戦コクピット(中央キャノピー)
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