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3.事情聴取
3.事情聴取
テーブルを挟んで俺と、刑事たちが座った。
「これから、お前の取り調べを行う。自分に不利な事は拒否できる。取り調べはビデオで撮影されている。君の名前は?」
須藤課長が言った。
「青木勝一です」
「どこから来たのだ」
「それは、俺にもわからない。俺は8月14日、B-29の迎撃で〇基地からゼロ戦8機で飛び立ったんだ。
90機のB-29と数10機のF6Fの機銃掃射で俺たちは苦戦した。
俺は、B-29に体当たりしようとしたが、右翼に被弾し墜落したんだ。
しかし、機体は空中分解しなかった。
はじめ俺は音速を超えたのかと思った。
だが、目の前にトンネルが現れ、俺の機は中に吸い込まれた。
気づくと貴方たちが言う〇飛行場の上空にいたんだ」
「信じられないね。B-29と交戦した? 何年の8月14日だ?」
「1945年です」
「嘘が下手だな。その日は終戦記念日の前日だ。
敗戦前日に交戦などしない」
「嘘じゃない」
「お前の嘘を信じろと言うのか」
「ゼロ戦を見てもらえばわかる」
「どうせ、レプリカだろ。日本には飛べるゼロ戦はないんだ」
「レプリカって何だ?」
「偽物と言う意味だ。そんな事もしらないのか」
「ゼロ戦は本物だ」
「どうやってお前が青木上飛曹だと証明するんだ」
「嘘じゃない。俺を調べてくれ。〇飛行隊にいたんだ」
「これ以上、平行線だな。じゃ、お前のいう、〇飛行隊に青木勝一上飛曹がいたのか確認しよう」
須藤課長はそう言って、取り調べを打ち切った。
須藤課長は、別室に行くと、マジックミラー越しに青木上飛曹の取り調べを聞いていた厚労省の杉田、国土交通省の飯田、内調(内閣調査室)の山田、自衛隊のX実験隊(仮称)の赤城に質問がないか訪ねた。
皆質問はないと言った。
内調の山田が言った。
「厚労省の杉田さんは、〇飛行隊に青木勝一が存在したか確認してください。
X実験隊(仮称)の赤城さんは、ゼロ戦の資料を収集してください
国土交通省の飯田さんは、飛行計画の有無を確認してください」
「考えすぎかもしれないが……」
赤城は次の言葉を発するかためらいながら言った。
「問題は男が人間なのかということだ。
外見は人間で未確認の生物だったら?
もし、未確認の生物なら至急隔離しなければいけない。
未知の病原菌が持ち込まれるかもしれない」
X実験隊(仮称)の赤城が言った。
「考えすぎじゃないですか?
どう見ても人間ですよ。ただ、最悪の事態も考えると? 感染症の観点から防護服を着せたほうがいいですね。
問題は検査の結果が本人だった場合です。
過去から現在に現れたことになる。
タイムトラベルとなると国防案件になる。
X実験隊(仮称)の赤城さんの事案ですかね。
X実験隊には医学部門もありましたね。隔離して、男の正体を調べてください」
内調の山田が言った。
俺は特殊なスーツを着せられることになった。
未確認の生物なら、未知の病原菌がありかもしれないと言うことだった。
しかし、それなら、〇飛行場から警察車両に乗り、富浜署で尋問も受けている。
日本の検疫は中途半端だ。俺が宇宙人なら何人も接触している。未知のウイルスがあれば感染していると俺は内心笑ってしまった。
数日後、再び、取り調べ室に全員が集まった。
俺は特殊なスーツを着ている。感染防止スーツだという。
「名簿を確認してもらいましたか」
須藤課長が言った。
厚労省の杉田は持参したファイルを開き説明した。
「確かに〇〇隊に青木勝一上飛曹(准士官)の名前があります。
青木上飛曹は秋田県の農家の子として生まれ、中学校を卒業後、操縦訓練生を経て○○航空隊で戦闘機の搭乗員となった模様です。
両親はすでに亡くなっており、奥さんも10年前に他界しています。
3男1女ですが、みな亡くなっています」
俺は妻も家族も亡くなっているという言葉に茫然とした。
「8月14日 〇航空隊から飛び立ち空中戦で亡くなっています。
8機全機が撃墜されたようです。
青木上飛曹は亡くなってから少尉に昇進しています。
写真が残っていました。信じられないのですが、写真は本人のようです」
厚労省の杉田が言った。
「本人の可能性があるのですか。終戦の前日も交戦していたんですか?」
須藤課長はビックリして言った。
「1945年8月15日、正午ラジオの玉音放送で日本の降伏が国民に公表されましたが、軍に戦闘行為を止める通告は遅れたため、戦闘は続けられたようです。
ですから、8月14日も迎撃していたのです。8月15日も迎撃しています。終戦後も戦闘を続けた隊もあったようです。
各地にB-29が現れ、複数の航空隊が出撃したようです」
厚労省の杉田が言った。
「〇飛行場のゼロ戦の機体のエンジン番号を確認しました」
X実験隊(仮称)の赤城は資料を開いて言った。
「じゃ、なぜ、死んだはずの男がしかもゼロ戦で〇飛行場に降りることができたんだ」
内調の山田が言った。
「それは俺にはわからない。今年は何年だ」
「2021年8月10日です」
中山刑事が言った。
「76年経った? 冗談だろ」
俺は言った。
「確かに冗談だな。じゃ、〇飛行場に降りる前の事を、この方たちの前でもう一度話してくれ」
須藤課長は言った。
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