4. 空中戦

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4. 空中戦

4. 空中戦 1945年8月14日。 レーダーは100キロ先のB-29撃爆機を補足した。 機影は90機以上。 高度は10000m。 ○○基地から8機のゼロ戦が迎撃することになった。 4機構成で1機が攻撃、3機が擁護することになっていた。 ゼロ戦は10000mまで上昇しするには40分かかる。 上昇力は6000mで7分30秒だが、7000m超えると空気が薄くなる。 だが本当にきついのは8000m、9000mを超えてからだ。 エンジン不調で脱落する場合もある。 俺たちは4000mまで昇すると、酸素マスクをしてさらに8000mまで上昇した。 8000m超えると、冬用の飛行服を身にまとっても、体の芯まで冷えた。 B-29爆撃機の攻撃は、10500mから45度の角度で急降下しながら20mm機関銃を打つ戦法だ。 7.7mmで接近して撃つのが効果的だが、相手は12.7mm機関銃12門が上方下方にあり容易に近づけない。 俺たちの航空隊は10500mに達した。 みな増槽(増設タンク)を落として軽量化した。 B-29とF6Fが2km先の眼下に見えた。 B-29は全長30m、最高速度640km以上、12.7mmの機銃が11門もある。 しかも10000mから爆撃できるよう、与圧装置があって、搭乗員は酸素マスクも、防寒具も必要ない。 B-29が撃墜されたことがあって、地上に落下した本物を見た時は、その精巧さに驚いた。 F6Fも凄かった。2000馬力で、12.7mm砲が6門もある。重量は6トン近くあったが、最高速度はゼロ戦より早く590km以上だった。 一方ゼロ戦に搭載した中島「栄」21型エンジンは、3000mの高度で1100馬力だ。 既に空戦性能で負けていたのだ。 B-29の格納庫が開き、おびただしい爆弾の投下が始まっていた。 爆弾投下が終わる前に迎撃しなければならない。 隊長の合図で、俺たちは操縦かんを思いきり前に倒して急降下を始めた。 B-29爆撃機、F6Fヘルキャットも俺たちに気づいて、一斉に機銃掃射が始まった。 ゼロ戦2機がB-29を攻撃し、6機のゼロ戦がF6Fと交戦した。 隊長機がF6Fとの空中戦で1機を撃墜した。 「やった!」 俺は叫んだ。 2000馬力で防弾性能の優れたF6Fの機銃掃射でゼロ戦は苦戦した。 B-29爆撃機の12.7㎜12門からの機関銃と、F6Fからの機銃掃射を避けるように機体を回転させて俺たち2機の攻撃隊はB-29に挑んだ。 俺は20mm機関砲を撃ったが弾は流れて中々当たらない。 7.7mm機関銃に切り替えて撃ち続けた。 ジェラルミンで輝くB-29の機体が目前に迫ったが、次の瞬間、B-29は100m上空にあった。ゼロ戦は秒速160m以上で降下していたからだ。 今度は上空からB-29の機関銃とF6Fの機関銃が襲ってきた。 目の前で、弾丸が輻輳しながら発光して飛んでいく。 見ると、攻撃機、擁護機のゼロ戦2機がエンジン部分から火炎を上げて、落下しているのが見た。 「ちくしょう! 敵をとってやる!」 もう一度、上昇して体当たりしてやろうと思った。 だが、右翼から燃料が漏れて、霧のように散っているのが見えた。 タンクのある部分に被弾したようだった。 ゼロ戦は機体を軽くするため、防弾燃料タンクになっていない。 被弾すると炎上することが多いが、燃料を使い切ったのがよかった。 翼は炎上しなかった。 燃料計を見ると、胴体部の燃料は残っていた。 だが、操縦かんがきかなくなった。 落下スピードが早すぎて、操舵できないのかもしれない。 俺は必至で操縦かんを手前に引き続けた。 機体はそれでもそのまま垂直で落下した。 急降下制限速度は360ノット(667キロ/h)だ。 450ノット(音速の0.9)を超えると音速の領域になるらしいが誰も体験した者はいない。 生還した者はいないからだ」 「それからどうした」須藤課長は言った。 B−29 0a593c43-52b8-4155-b53c-bc91cebb750c F6Fee0d8f67-9542-496a-9376-7fe11eae187e
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