5.時空を超える

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5.時空を超える

5.時空を超える 俺は、風防ガラスのキャノピーを後方にスライドして、落下傘で脱出しようと試みたが内部のロックピンが引っかかって開かなかった。 400ノット(740km/h)を超えて、超ジュラルミンの機体はうなりを上げた。 機体はねじれて沈頭鋲(ちんとうびょう:ネジの頭を平らにしてある)が何本も抜け落ちた。 骨組を覆った0.5mmの超ジェラルミン外鋼板も剥がれそうになった。 速度計は450ノット(音速の0.9倍)を超えた。 分解して死ぬ! 地表の景色が見えてきた。 その時、衝撃波と衝撃音が機体を包んだ。 まるで景色の映った巨大なスクリーンを突き破ろうとしているようだった。 スクリーンは円錐形になったように歪んで後方に流れていくように見えた。 視界はどんどん狭くなった。 景色が映っているトンネルの中を超高速で落下しているようだった。 振動していた機体音は、突然止まり、宙に浮いているような感覚になった。 時間が止まったような不思議な感覚だった。 急降下でゼロ戦は音速の壁を破ったのか? 死んだのか?  その時、トンネルの前方に光が見えた。 そのトンネルを抜けた瞬間、エンジン音、風防に当たる風切り音、ジュラルミンの翼がしなる音が襲ってきて、俺は死んでいないと思った。 恐ろしいほどのGに体も耐えきれなくなった。 地表まで1000m位だった。 このまま地上に激突して、大火災を起こすのか?  俺は最後の力を振り絞って再び操縦かんを手前に引いた。 重石のように操縦かんは動かない。 それでも、操縦かんを引き続けた。 操縦かんが手前に動き出した。 機体は緩い楕円を描いて機首が少しづつ上がってきた。 市街は、何度もB-29の爆撃を受けて焼野原になっているはずだ。 ところが、貴方たちのいう〇飛行場の上だったと言うことだ」 俺は言った。
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