雨催い

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「流されてしまいました。溜池なら天国に行ってもザリガニ釣楽しめていいと底を攫うこともしませんでした。どうせ元はうちの溜池ですから」  過去の参事と重なるとこが多く、おかしな想像が膨らんでしまいます。 「あなたは誠君が発見された時にご遺体を確認されましたか?」 「はい、下のアパートの逮捕された男の布団の上にうつ伏せに寝かせているのを両親と一緒に確認しました。嫁は気絶しました。父親は嫁を抱いて家に戻りました。刑事さんも立ち会っておられたでしょう」  私も立ち会っていました。叔父の言う通りです。とするとしっかり確認したと言うには及びません。 「失礼ですが、しっかりと誠君の顔を見て確認されましたか?」 「他に誰がいるんです、誠以外に?」  両親もこの叔父も、その潜在意識から長男であることを疑いもなく認めていたのでした。 「すいませんがもう一度遺体の確認をお願いします」  叔父は渋々了承した。 「裏返しておきましたから」  担当が遺体をうつ伏せにしていた。叔父は手を合わせ片目を開けて遺体の背を見た。ぶつぶつと言っているのはまさに念仏でした。 「すいませんがもう一度仰向けにしてください」  担当は気を利かせたつもりが外れだったので苦笑いをして仰向けに返した。叔父の念仏ははっきりと聞こえるほど大きくなりました。私が肩を叩くと念仏を止め目をゆっくりと開けました。 「お願いします。しっかり確認してください」  叔父は目を顰めて遺体に寄りました。 「ああっ」  倒れそうになるのを私が支えました。  
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