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「どうされました?誠君ですね?」
「分からない」
「分からないとはどういうことです?」
「誠のようで兄にも似ている」
血の繋がった親族、それも同じ齢、似ていない方がおかしい。
「しっかりと見てください。お願いします」
頭を下げる以外にない、この叔父から誠と証言を取ることがこの事件のスタートである。
「歯が見れますか?」
「なんです?」
「歯ですよ歯。兄は前歯の下側の乳歯が二本とも抜けてありませんでした。誠はまだ乳歯が残っていました」
「お願いします」
担当は頷いて口を開きました。硬く閉まっています。担当は遺体に手を合わせ再度力を入れて口を開きました。少し開けると水と一緒に小さなザリガニが出て来ました。担当も私も驚いて一歩後退しました。。ザリガニは小さいながらも両方の鋏を持ち上げて威嚇しています。
「どうですか?」
「兄さん」
叔父は抜けた乳歯を見てそう言いました。
「それでは誠君じゃありませんね」
「兄に間違いありません」
担当は首を傾げました。
「うつ伏せに倒れた時に抜けた可能性もある。この年頃はいつ抜けてもおかしくありませんからね」
確かに担当の言うことにも一理あります。
「着ていた服を見せてくれませんか?」
担当はボロボロになった布切れをビニール袋から出した。
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