夕立の君

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*** 待てど暮らせど、文は来ない。 その日、空を見上げると小雨が降り始めていました。 じっとりとした暑さの中。 これから更に、この夕立は酷くなるでしょう。 中将様のお心も、この夕立と同じだったのでしょうか。 ほんの一時(いっとき)の、激しい恋情。 通り過ぎれば、何事も無かったかのように。 「姫様!」 山吹がひと目を気にしながら私の元にやってきました。私はけだるげに山吹の方を見ます。 「何、山吹。私、気分が優れないの…」 「時間がありません、こちらへ!!」 え…? 山吹が焦る理由が分かりません。私は眉をひそめました。 「山吹、何用なの、」 「かの君がいらしてるのです…!!」 かの、君? …まさか、中将様が!? 「山吹、」 「こちらです!私が外で番を致しますから、どうか姫様…!!」 山吹に言われるがまま、私は中将様のいらっしゃる塗籠に案内されました。 妻戸を開けると、あぁ、ああ…!!! 「中将、さま、」 そこには、雨に濡れた中将様がいらっしゃったのです。
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