夕立の君

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なんというおっしゃりよう。 回りくどくて、この方こそきっと生意気な人だわ。 それなら、こちらもそれなりのお返事を。 「それは何処のどなたなのか存じ上げませんが、少なくともこのような無礼な方を相手にするような女じゃなくてよ。私は。」 私がこういうと、中将様は小さくお笑いになりました。 「勝気な姫だ。私では恋のお相手は務まらないと?」 「あら、私を誘ってるの?もしや先程仰ってたのは御自分のことなのかしら。生意気な女の方がどうとか…」 「先程から震えていらっしゃる割に、口だけは達者なことで。」 震えを指摘されて、思わず赤面します。 …嫌な方。 「きっと私達は似た者同士。お似合いだと思いませんか。」 中将様は私の耳元で囁きます。私はここで初めて中将様の方を振り返りました。 ああ…なんて美しい方。通りの名の通り本当に涼やかでで、見るものをはっとさせる。 「似た者同士なら、きっとお似合いではなくてよ。だって私、私みたいに口喧しい男なんてご遠慮したいもの。静かで威厳のある男性の方が良くなくて?」 悪戯っぽく笑ってみせると、中将様は苦笑いしました。 「困ったな、ここまであれこれ言い返してくると思わなかった。そしてさらに困ったことに、ここまで言われると意地でも落としたい。」 「貴方の意地に付き合って差し上げるほど、私も暇ではなくてよ。」 こう言いながらも、私と中将様は向かい合う体勢になっていて。中将様は私の顎を少し持ち上げました。 「その割に先程より心を開いておいでのようだ。顔を隠すのはもう良いのですか?」 「今更隠しても仕方ないもの。それより父上に言いつけてやろうと思って。」 「怖い姫だな。」 少し笑って、中将様は口付けをしてきました。
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