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仕事を終えると徒歩で自宅まで帰る。
楓君にはタクシーで帰宅するようにと何度も言われているが体力が必要な仕事をしているから普段からよく歩くようにしている。
お陰で体重も減った。
「今日も疲れたなぁ」
ちょうど目の前の信号が赤になり足を止めた。
同じタイミングで肩にかけている鞄の内ポケットに入っているスマートフォンが鳴った。
慌ててそれを取り出すと電話の相手は松堂君だった。
「…そっか、今度会おうって言われてたんだっけ」
沖縄旅行を終えてからにして、と楓君から言われていたからそれを松堂君にも伝えて会う時期をずらしてもらっていた。
すぐに電話に出ると弾んだ声が受話器口から聞こえた。
「もしもし。松堂です。今、大丈夫?」
「もちろん!ごめんね、会う日程の話だよね?」
「そう、忙しいなら無理しないでいいから。いつでもいいし」
「松堂君の方が忙しいから…平日と休日だったら休日だよね?」
「そうだね。日曜日とかなら助かるかな」
「じゃあ次の日曜日でいいかな?時間は午後とかは?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
松堂君の“話したい事”とは何だろう。電話を終えると目の前の横断歩道はまた赤信号に変わっていた。
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