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時は流れ、ジャンはDomだと診断された。
そしてさらに数年後、彼の妹がSubだと診断されたとき、初めてSub保護施設の存在を知ることになる。
本来ならSubである彼女は施設に保護されるはずであるが、家族に愛されていた彼女が施設に行くことはなかった。
どんな方法で彼女を留めたのか両親は語らなかったが、聞こえてくる大人たちの噂話を繋ぎ合わせているうちに、あの幼なじみのことを思い出していた。
噂話を聞けば聞くほど……「もしかして」と思えるほどには彼の失踪と辻褄が合っていた。
幸か不幸か、自分もDomなのだ。
いずれ自分がSubを買う日が来たら、彼に会えるかもしれない……いや、彼以外にあり得ないと、密かに心を決めていた。
そしてさらに数年が経ち、ついにジャンの念願だった、Subを買う日がやってきた。
決意を胸に秘めて施設に向かった彼だが……幼なじみが失踪したのはもう何年も前のこと。
当然、目当ての彼はそこにはいなかった。
しかし、ここでSubを買わずに帰ることは許されない。
悩んだ結果……どことなく彼の面影が見える少年を買い取り、ルーカスと名付け丁重に迎え入れた。
しかし長年縋ってきた希望が打ち砕かれて、心に穴があいたようだった。
同時に「執事」制度の是非に疑問を持った彼は心を紛らわせるかのように、密かにこの施設について調べることにした。
調べると言っても、まだまだ少年の彼にできることなどたかが知れている。
ましてや、施設の内部情報など国家機密レベルだが、それでも自分にできることをしたかった。
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