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7.意思ある人形
(しまった……!!)
ずっと感じていた罪悪感からか、あるいはもっと別の感情か。
今まで感情のない人形として、完璧に演じてきたはずなのに。
じっと見つめられて、頬に手を触れられて。
何故だかその目に圧倒されて、ルカは思わず目を逸らしてしまった。
いや、まだ大丈夫だ。
ここで動揺したらさらに不自然だから、落ち着け…………
「もしかして、意識がある?」
ここで落ち着いていれば、やり過ごせたかもしれないというのに。
彼の視線が落ち着かなくて動揺して、またしても身体をピクリと動かしてしまったことは逃れられない決定打だった。
「落ち着いて、ここには僕しかいないから」
まっすぐに自分を見る研究員は、嘘をついているようには見えないし、できるなら話して楽になりたい。
けど……彼の目的がわからない以上、本当に信用していいのかわからない。
どうしていいかわからなくて、じっと視線を返したままどれくらい経っただろうか。
「ごめん、本当ならこんなことしたくないけど、この機会は逃せない」
彼は小さなため息をひとつ吐いて、真剣な表情でそう告げた。
宥めるようにして、優しい手付きでルカの両肩に手を添えて、ゆっくりと顔を近付ける。
「Say」
「…………!」
「お願い、君のこと……話してほしい」
――そう耳元で囁かれたら、勝てやしない。
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