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その日帰宅したジャンは、施設で昇進したことと、これからの決意についてルカに話した。
Subを解放し、人として生きられる社会にしたいこと――――
ルカは初めは我が事のように祝福する気持ちで話を聞いていたが、やがて顔色を変えて全身がガタガタと震え出していた。
「ルカ…………?」
「…………やだ…………ルーカスも…………? いやだ…………」
「どうした? ルーカスがなんだって……?」
「いやだ………いやだ……」
ルカは明らかに正気ではなく、今にも過呼吸になりそうなほど呼吸は乱れ、虚ろな目をしてなにかに怯えているように震え続けた。
「ルカ……? これは……ドロップ……?なんで…………」
ジャンはルカを抱きしめて、そっと後頭部を撫でながらみずからも呼吸を整える。
意識的に包み込むようにグレアを放ち、耳元で囁くようにゆっくりと、自分にも言い聞かせるようにして言葉をかける。
「なにもしないから、落ち着いて…………そう……Good boy」
「は………………」
「ルカ……そう、ゆっくりでいいから…………」
突然パニックを起こしてドロップに陥りかけたルカの姿に戸惑いながら、ジャンは根気強く宥めるように声を掛け続けた。
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