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11.過去と未来
「ルカ……!」
――――まだ声変わり前の、あどけない少年の声に呼ばれながら手を引かれ走っていた。
小さいながらもしっかりと握られたその手は温かい。
そうだ、どこにも居場所がなかった自分を、この子が連れ出してくれたんだっけ。
誰からも存在を許されず、かと言って逃げ場もなかったはずなのに。
彼だけはいつも笑顔で迎えにきてくれた。
彼といるときだけは、自分が存在することを許されたような気になれた。
だけど、こんな日々は長くは続かないことはわかっていた。
彼は本当は自分には関わってはいけない人だけど、今だけは彼との思い出が欲しかったから。
今日が最後かもしれないと毎日怯えながらも、狡い自分は何も告げずに彼との日々を噛み締めていた。
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