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それからジャンは、施設の役員として運営に携わりながら、水面下では執事解放に向けた下準備を進めていた。
例えばルカのように返品されてきたSubを中心に、臨床実験として徐々に制御を弱める措置を施した。
また密かに、地下組織であるSubの保護団体に多額の寄付を行いながら連絡を密にしていた。
そこには表社会での存在こそ消されているが、施設行きを免れたSub――例えばジャンの妹たちや彼らの子孫が暮らす、地図には載らない国家機密として黙認された集落があった。
彼らと連携することで、元「執事」のSubたちの将来的な仕事や生きる居場所を確保するべく手を回していた。
その一方で、憂いがなくなったルカもまた、進んで研究や実験に協力した。
さらにジャンの助けになりたいと、空白の十数年を埋めるように勉強をし始めると、まさに乾いたスポンジのように知識を吸収していった。
このことはジャンにとって個人的に嬉しかったのはもちろんであるが、同時に人としてのSubの潜在能力に大いに期待を持たせる出来事でもあった。
そんな日々の中で、保護団体との信頼関係も強固なものになってきた頃……ジャンは妹との再会を果たす日を迎えることになる。
再開した彼女には、既に大切な家族がいた。
集落で出会ったDomのパートナーである青年と、彼とのあいだに息子を授かっていた。
その少年がDomであると判明する頃、初めて出会った執事ルーカスに異常な執着を見せはじめるのは――それから数年後のことである。
それから――――
やがてジャンたちが施設上層部の汚職を突き止め執事制度を改革するのは、そう遠くない未来の話――――
End.
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