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「あー真下」
「……かった」
腕の中で真下は何事かつぶやく。くぐもっていてよく聞こえなかったけれど、俺には良かったと言ったように思えた。
俺が転校しないと……いなくならないと知って安心したのか。そんなに、喜んでくれるのか。
勘違いさせてしまったことを謝ろうとしたのだけれど、なんだかこっちまで気恥ずかしくなってしまい、何も言えなくなってしまった。
ここ数日で真下の印象がガラッと変わった。ほんの少し前までは、取っ付きにくい奴と思っていたのに。今はもう、そんなイメージは微塵も残っていなかった。
「なあ、真下」
俺はもっと真下のことを知りたくなっていた。以前よりは近づいたけれど、まだまだ俺たちは知らないことばかりだ。もっとお互いのことを、少しずつでいいから知っていきたい。だから……
「まずは、友達からじゃダメかな」
友達からゆっくりと距離を縮めていきたい。スタート地点がそこからじゃ、付き合うまで時間がかかるかもしれない。
でも、それでいいじゃないか。
まだ高校2年生。
俺たちには、たっぷり時間があるんだから。
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