30人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「あの話って本当なの」
何の前触れもなく投げられた問いかけに、俺は目をパチクリとさせた。
机を挟んだ正面には真下が座っている。眼鏡のレンズの向こうの目は真剣そのもので、俺はちょっと戸惑ってしまった。
放課後の図書室でのことである。整然と並べられた机に座っているのは俺たちだけ。別に二人で仲良く勉強会を開いていたわけではない。
確かに真下は外見通り頭が良いらしいから、俺みたいな万年赤点ヤローにも勉強を教えることはできるだろうけど。真下とは他クラスだし、勉強を教えてもらえるほど親しくはなかった。
机の上にはプリントが散乱している。来週配布予定になっている図書だよりだ。
俺は図書だよりを止めるためのホッチキスを持ったまま、何だってと聞き返す。
俺と真下は同じ図書委員で、委員の仕事でこんな時間まで残っていた。といっても、これは本来は俺がやらなくちゃいけない作業で、真下はそれを手伝ってくれているだけなのだが。
俺の学校の図書だよりには本のレビューが載っていて、これは図書委員が書いている。レビューの担当は順番制で回ってくるのだが、俺はうっかり書くのを忘れてしまっていたのだ。
おかげで印刷がギリギリになってしまい、責任を取ってホッチキス止めは俺がやることになった。全クラスに配布する図書だよりの量に絶望していた時に、手伝うと声をかけてくれたのが真下だった。
最初のコメントを投稿しよう!