引っ越し

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   なつめ達は車から降りると、引っ越し業者の人もトラックから降りた。 「武藤さん?」引っ越し業者の中で、一番年配の方がそう話し掛けてきた。  宏子は先ほどはどうも。と言うような軽い挨拶を済ました。 「じゃあこの家に荷物を運んだのでいいですか?」 「あ、はい!お願いします」  宏子は丁寧に頭を下げると、引っ越し業者はテキパキと準備を始めた。 「ほら、あんた達も持って来た荷物と連れて来たサクラとユキとハル下ろして」  サクラ、ユキ、ハルとは武藤家が飼っているペットの名前である。  サクラは白に黒ブチのメス猫で、ユキは真っ白なオス猫である。ハルは茶色のオスの柴犬だ。 「ほら、着いたよー!サクラ、ユキ、ハル」  サクラとユキはペット用キャリーの中で緊張しているのだろう。目を丸くし一番奥に息を潜めるようにじっとしていた。  それとは対照的に、ハルは尻尾を千切れんばかり振ってキャリーから出て遊びたがっていた。 「なつめはサクラとユキね!私はハル連れて行く」 「はいはい。分かってますよー」  なつめはそう言うと2つのキャリーを両腕に一個ずつ持ち歩いた。 「さっすが力持ち!」  菜々花がそう言って笑うと「うっさいわ!」と一喝した。 「光一は父さんの位牌持ってきてくれる?母さん引っ越し業者の人に置場所言わなきゃいけないから。頼んだよ」  宏子はそう言うと家の中へ入って行った。  家に入ると宏子は忙しそうに業者へ指示を出していた。 「あのー、これ何処に置きましょうか?」  段ボールを持った、バイトだろうか?青年がなつめに訪ねてきた。 「あー」なつめは彼の持つ段ボールの横を見ると“お父さん”とマジックで書かれていたため、「私が運んどきますのでそこに置いて置いて下さい」と答えた。
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