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荷物を運び終えるのは以外にも早かった。
あっという間に引っ越し業者も運び終えると帰ってしまったし。
何よりも今日からここが我が家になるのかとしみじみなつめは思うのであった。
宏子はなつめの部屋にやって来て「だいぶ片付いたし、お弁当でも食べよっか」と言った。
荷解きに夢中になっていたのか、気が付けば時刻は19時になろうとしていた。
「そうだね。この時間だし、残りは明日にしてご飯食べよっか」
となつめは笑った。
チーン。りん【仏壇にあるお椀型の仏具】の音が部屋の中に響き渡る。
仏壇には笑顔で写る父洋一。
なつめが20歳のとき心不全で亡くなった。
その時父親の親族と派手に揉めた。元から父親自身も親族と不仲ではあったが、亡くなった瞬間何もかもが変わった。家は元々土地の権利が父方の祖母になっていたため、ある日父の弟夫婦が家を建てるから出ていくようにと言われた。
母宏子は必死に土下座してしばらくいさせて欲しいと頼みこみ5年だけ猶予を貰い、5年経った今こうして引っ越した。
(父さん、こんな形になったけど、新しいこの家で私達頑張るね)
なつめはそう洋一に伝えた。
仏壇で手を合わせたあと、夕飯の弁当を食べていると「でも良かったよな」と光一が言った。
「何が?」
「いや、前の家よか綺麗な家も決まってさ父さんも喜んでるよ」
「そうねぇ」
「本当だよね!一時はどうなるかと思ったよ」
と菜々花はほっとしたような口ぶりで言った。
「でも、その分通勤距離が私となつめは遠くちゃったけどね」
と宏子は苦笑いを浮かべた
「でも菜々花は近くなったから良かったじゃん」
そうなつめが言うと、光一が「なつめは陸人と遠くなったやん。別れるんちゃうの?」
バシンと光一の頭を叩くなつめ。
「私の彼氏やし、あんたよりも歳上なんだから“さん”付けなさいよ」
そういうと一斉に顔を見合わせて皆笑った。
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