金魚

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金魚

 引っ越しして1年。  色々と慣れてきたある日の夜、なつめが急に「金魚を飼いたい」と言い出した。 「金魚!?」  宏子は耳を疑った。なつめが幼い頃祭りの金魚すくいでとったのを飼ってはいたが、上手くいかず結局水槽も捨ててしまったからだ。 「うん。ほら風水でさ金運が上がるってこないだテレビで言っててさ、ウチって金運悪いじゃん?だから新しく引っ越しして落ち着いたし飼いたいなぁって」 「やめとけよ。どうせ死ぬよ」  テレビを見ていた光一はそう言う。 「今度はちゃんと育てるし、ネットで色々調べたし、大丈夫だよ」 「でもねぇ……昔飼ってたのを思い返してみると金魚は難しいし何より、あんたに出来るの?」 「もう子供じゃないし、ちゃんと飼育すれば問題ないと思うけどな……」 「無理無理。なつめには出来ないね」  呆れたように光一は首を横にふった。 「うっさい光一!!」  そんな中スマホのアプリゲームをしていた菜々花が「……いいんじゃない?」と口を開いた。 「私たちも子供じゃないし、なつめが責任持って飼うって言ってるんだからさ」  宏子は少し考えると「そうね」と納得したような口ぶりで言った。 「ちゃんと世話するのよ!」 「そうだぞなつめ。生き物なんだからちゃんとしろよ!!」  宏子が納得したからか、否定的であった光一も納得させることが出来た。  なつめは子供のように「うん!ちゃんとする」と頷いた。  次の休みの日。  なつめは陸人と隣町のペットショップへと足を運んだ。 「ごめんね。こんなことに付き合わせちゃって」 「いいよ。俺もちょうどロロの餌買いに来たかったし」  陸人はそう言って笑った。  二人は当たり前のように手を繋ぐと店内へ入った。  店内は小動物の鳴き声や、犬や猫の鳴き声と人の声で賑わっていた。 「先に水槽から見る?」 「そうだね!どんなのがあるか見たいし!」 「よし、じゃあ金魚コーナー行くか!」
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