金魚

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 夕方家に着くと、陸人は「着いたよ」と少し眠りこけていたなつめの頭を小突いた。 「ふぇ?あ、もう家か」  なつめは寝ぼけ眼で目を擦り背伸びをした。 「起きたかなつめ?」 「うん」  そう言うと2人ともシートベルトを外し、車のドアを開けた。  車から降りると、陸人は車のトランクを開け水槽を手に持った。 「え?いいよ!運べるし……」 「いいから。このくらい運ばせて。それに、可愛い彼女にカッコつけたいじゃん」  なつめはその言葉にアルコールでも飲んだように全身がカァっと暑くなった。  顔を赤くするなつめを陸人は(可愛い)と思うのであった。  二人は玄関先に立つと、なつめが鞄から家の鍵を探し中へ入った。 「ただいま」  玄関との仕切りのドアを開けると、宏子が料理の支度をしていた。  ふとなつめは匂いから(今晩はカボチャの煮物だな)と思うのであった。 「こんばんは。お邪魔します」  陸人は宏子に頭を下げると、宏子は料理をする手を止めた。  ダイニングキッチンからなつめに「おかえり」と告げると、宏子は陸人が持つ水槽を見て申し訳なさそうな顔を浮かべた。 「あら、陸人くんなつめの為に一緒に買いに行ってくれたのね!本当にごめんね、ワガママな娘で!」 「いえ、僕も用事があったんで」  気まずそうに話す陸人に、宏子は言う。 「陸人くん、ウチでご飯食べて行かない?」 嬉しそうに今にも鼻歌を歌いそうな宏子をなつめは「お母さん!」と呆れ気味に言うのであった。 「ごめんね!母さんが強引で」  と小声で言う。 「大丈夫予定ないし、帰ってもカップラーメンだからさ」  と陸人は苦笑した。
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