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陽炎の中に見出した赤い縁台。
他の旅人たちも、同じように、あの揺らめきの中で彼女に出会ったのだろうか。
夏の夕立や、冬の豪雪。
誰かがひどく困り、あるいは疲弊しているときにのみ、あの店は入口を開くのだろう。
妖艶というよりは、元気の塊といった茶目っ気のある女の顔と声を思い出し、男の胸には夏の暑さとは違う熱が生まれる。
かくれんぼは得意だと言ったが、生憎とこちらは、それを見つけるのが得意な少年だった。
いつかと言わず、帰り道に必ず見つけてやる。
女から受け取った瓢箪のくちを開け、茶をひとくち。
夏の暑さに負けず、不思議と冷たさを保ったままのそれは、男の心も潤した。
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