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今から一月前のこと。
大広間に集められた諸侯の前で、宰相が一枚の書状を読み上げた。
「王太子、アルベルト・グナイゼン殿下。本日をもって、その地位を廃し、レーフェルト宮殿に御移りいただきます」
耳にした言葉が信じられなかった。
呆然としているうちに、次々に罪科が読み上げられる。
「⋯⋯一、王太子でありながら、政治・軍事への関心を示さず、国教以外の宗教に傾倒したこと。一、婚約者を軽視し、身分を軽んじて平民を近くに置いたこと⋯⋯」
「何を言う! いつ私がそんなことを!!」
思わず椅子から立ち上がる。
「殿下、この一年、月初めの会議に一度としてお見えにならず、軍事訓練にもお出ましになりませんでした。どうして関心があると申せましょう?」
「正教会よりも、平民どもの間に流行っている宗教に、自ら進んで教えを乞うておられるとか」
「御婚約者のノーエ侯爵令嬢のお心を踏みにじり、平民の娘を宮中に置かれ、お立場を軽んじたと聞き及んでおります」
宮中伯たちの口から次々に非難の言葉が上がる。
どれもこれも、全くの言いがかりに過ぎない。
帝王教育が始まったばかりなのだから、諸侯の会議に立ち会うのは早いと言われた。軍事訓練のように荒々しいものは、お体に障る。時を見てご覧になればよいとも言われてきた。
少しでも顔を見せた方が良いのではと聞けば、これから時間はいくらでもある。焦ることはないと諭される。
⋯⋯そうだ、不安だった時はいつでも相談してきたのだ。二人の宮中伯に。最も信頼を寄せた男は、真正面の位置に悠然と座っていた。
正教会には何度も赴いて祈りを捧げ、大司教たちとも対話してきた。市井の様子を見るために、こっそりと平民たちの暮らしを見に行ったことはある。だが、馬車から通りを眺めただけで、直接言葉を交わしもしなかった。
そして、婚約者。⋯⋯シャルロッテ。
「どんなにお忙しくても、様々な贈り物をご用意くださるお心遣い、ありがたく存じます。でも、どうぞご無理をなさらないで。またお茶をご一緒できれば嬉しいのですが⋯⋯」
金の髪を揺らし、頬を染めて微笑む少女の姿が目に浮かぶ。
彼女に会う暇すらろくになかったと言うのに、他の誰を側に置いたと言うのか。
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