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どんなに言葉を尽くそうと、何の意味もない。
唐突にそれがわかったのは、一枚の書状が目の前に突き付けられた瞬間だった。
王太子アルベルト・グナイゼン廃嫡の請願書。
文言の下には10人の宮中伯の名が連ねられ、一番上に筆頭としてヴァンテルの名がある。
宮中伯は全部で12人だ。例え残る二人が力を尽くしても、決定は翻らない。
「殿下。御身の今後の生活は今までと変わりないことをお約束致します。速やかに離宮に移るご準備を」
ヴァンテルが立ち上がり、真直ぐに私を見た。
私はお前に何をしたのだろう。
間違いだと思いたい。
なぜこんなことになったのかと問いたかった。
頭の中ではたくさんの言葉が響いていたのに。
何も語ることができぬまま、近衛たちが両腕を掴んだ。
国の最北にある離宮は、見渡す限り雪と氷に囲まれている。
レーフェルト凍宮。
北国から嫁いだ妃の為に、時の国王が建てたものだ。温暖な王都には雪がないと寂しがった寵姫の慰めにと、国王は莫大な金と人をつぎ込んだと聞く。
豪勢な造りの離宮は贅を極め、内部の装飾の一つ一つにまで手がかかっている。
周りは雪と氷でも、一歩宮殿内に入れば、快適で温かな空間が設えられている。それでも、王侯や貴族たちは、この地に来るのを拒む。
僅かな春と夏の他は常に寒さと戦わなければならない。周囲は享楽とは無縁の地だ。遥か南、常春の楽園と謳われた王都を捨てて、誰が最果ての地を望むというのだろう。
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