第2話 村の火

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 祭りの最後はきまって夜。村人は皆広場に集まって、村祭りの飾りに使った木製の像を火にくべる。  広場にうずたかく詰まれた竜人の像。美しい文様の記された像に藁をかぶせて、火をつける。  像を燃やすのは祭りのために村へ降りてきてくれた竜人達を、月におわします竜王様の所に返すためだ。  藁はぱちぱちと音を立て、火の粉を沢山飛ばしながらやがて燃えつき、それから竜人の像が燃え上がる。  それも夜半には火の気つきて、その一瞬前にひときわ大きく華々しい色で巨大な炎が上がる。  養父母は広場に出かけていて、レーキは家の辺りからその火を見ていた。  彼にはごちそうも、お楽しみも何もなかった。  それでも、レーキは祭りが好きだった。  天空を舐めるように上がる炎柱、人々が歌い踊る音。旅の楽隊が祭りの音楽を奏でる。  村中が何だかうきうきとして、まるで一時夢の国に迷い込んだみたいな。  誰もが皆浮かれ騒ぎ、誰もが皆優しくて、レーキの存在を()む事よりも祭りを楽しむ事を優先させる。  一人取り残されている寂しさはある。だが、意地の悪い仕打ちにさらされることの無いこの日は、レーキにとって一年で一番楽しい日だった。  大きな篝火(かがりび)が、燃えつきて輝くその瞬間、クライマックスを迎える祭り。広場で歓声が上がる。  鳥人の大半は彼らを創造したとされる赤竜王が象徴する火を祭り崇めている。  レーキも火は大切な、尊いものなのだと教えられてきた。  だからなのだろうか。こんなにもあの赤い炎に引き付けられるのは。
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