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「今日も付けてくれるかい」
そう言った貴方は、いつも切なげに笑っていた。手には首輪。負担を減らすために軽く、だけど誰にも切られないように頑丈に作られたそれは、彼にとっては覚悟の象徴だった。
僕を守るため、運命の番を捨てる覚悟。
その想いに、僕は首を差し出すことしか出来なかった。
「愛してる」
付ける前にうなじに押し付けられた柔らかい感触の熱さに、ひくりと喉が震える。
彼は嘘を付いていた。きつく抱き締める腕も、後ろから聞こえる吐息も、絶え間なく紡がれる睦言も、全てが嘘。厚く塗られていく嘘がいつか真実になる様に彼は僕を愛そうとする。
その重みに、僕が潰されそうになっているなんて気付かない。カチリと首を一巡して留まったそれが余裕があるのに息苦しく感じられる。応えを待つ彼に、僕も喘ぐような声で嘘を重ねた。
「僕もアイシテル……義兄さん」
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