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『カランカラン』
「し、失礼しまーす……」
店にお客様がやってきた。街の悪ガキに唆され、この店にいる幽霊を見に来た可哀想な少年だ。
「だ、誰かいますかー?」
少年は肩を震わせ怯えた表情で扉をくぐる。あかりはなく、日差しも蔦にあたって奥まで届かない。足りないあかりが店の不気味さをより一層引き立たせてしまっている。
「い、いませんか……?」
少年はウェイティングリストを見つけ、それを覗き込んだ。
「全部同じ人の名前だ……」
ファミリーネームは違っていても同じ名前というおかしなウェイティングリストを見て、少年は呟く。
「――ペリドット」
忘れられた英雄の名を紡ぎ続ける。それがこの店『ライトの魔法喫茶』の終わりなき使命。
心優しき少年は聞いてくれるだろうか。太陽の日差しを浴びた若葉のような瞳を持つ、優しすぎた英雄の物語を――
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