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Con cordialità
『カランカラン』
彼から貰ったヘリクリサムが咲き乱れ、蔦が店の周りを覆い隠していてもこの店を訪れる者はいる。幽霊を見るための愚か者ではない。喫茶店として訪れる優しい人間だ。
「こんにちは。やっとまた来ることが出来たよ」
「いらっしゃいませ。久しぶりだね。5年は経ったかい?」
「いや、もう10年この店に来てないね。それにしても、相変わらず外の花と蔦はそのままなんだね」
「もうそんなに経っていたかい? あの花は太陽に向かってのびのびとしていた方が喜ぶと思っていたんだがね」
「あれはほったらかしすぎだよ、店長さん」
今日やってきたお客様は『ペリドット・ソレイ』――ペリと呼んでほしいらしい――という、およそ10年前からこの店に来ている常連様だ。初めて来たときはまだ8歳の少年だったのに、いつの間にか18歳の青年となってしまった。
「いつものレモンティーで良いかい?」
「うん。あっ、今日のレモンティー良かったらこのレモンを使ってみて。僕の家で育てているレモンの木から取ってきたんだ」
「とても美味しそうだね。はちみつがあるから、それを使ってはちみつ漬けも一緒に作るよ。時間は大丈夫かい?」
ウェイティングリストにある名前の隣に今日の日付を書き込んでいたペリは頷いて質問に答える。
「ねぇ、久しぶりにあの人の話を聞かせて? 10年も経つと思い出すのに支障があってさ?」
「良いよ。どこからだい?」
「初めからが良いな。明日まで時間があるから最初から聞きたい」
「分かった。じゃあはちみつ漬けが完成するまで、英雄の面白い話をしてあげよう」
「初めて聞く話?」
「ああ、そうだよ」
ペリが3つしか無いカウンター席の真ん中に座る。座った所でペリの好きなレモンティーをコースターに乗せて渡す。目の前にいるペリは太陽のような笑顔をしながらレモンティーを口に運ぶ。
ある程度飲んだところを見計らって、カウンターの端に置いてあったオレンジ色の本を取るために置き石として使っていた3分の2が欠けているヒスイを下ろす。
「石を専門に扱う男が仲間に入ってから少ししたときの話だ。それを見たのはたまたま通りがかったその男と筋肉の女性で――
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