Con cordialità

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 『カランカラン』  「おじゃましまーす! きょうはアイスティーがのみたい!」   「いらっしゃいませ。来てくれて嬉しいよ。昨日はアイスティーしか出せなかったけど、今日は生ハムが出来たからそれも出してあげるね」   今日のお客様は『ペリドット・ソラーレ』少年だ。ソラーレ少年は7歳で一昨日初めて来たばかりの新規のお客様だが、既に3日連続で来店している。初めて飲んだアイスティーが気に入ったようで、いつもアイスティーを頼むようになった。   ウェイティングリストに今日の日付を書いているソラーレ少年を見ていると、出窓に飾っている光の魔石のように明るい子だと思う。今までこの店に来ていたの中でも一際明るくて眩しい。  「なまハムってなぁに? アイスティーみたいにあまくておいしいの?」   「生ハムは偉い人が食べられる高級なお肉だよ。塩を使っているから、ソラーレ少年には少し塩っぱく感じるかもね」   ソラーレ少年はヘリクリサムがよく見えるテーブル席にお行儀よく座ってアイスティーと初めて食べる生ハムを待っている。   「家族やお友達には生ハムを食べたなんて言ったら駄目だよ」  「なんで?」   「さっきも言ったように、生ハムは高級なお肉なんだ。もし言ったら、偉い人達にものすごく怒られてしまうんだ。ソラーレ少年でも怒られるのは嫌だろう? だからこのことは内緒なんだ。良いね?」  「うん! わかった!」   ソラーレ少年は怒られることを嫌う。だからこのことは絶対に言わないだろう。生ハムは今の時代では貴重品すぎて一般市民では食べることはおろか、それを見ることすら出来ない。昔と比べたら、こんなに美味しいものが食べられなくなることが悲しいと思う。   「生ハムにちなんだ、英雄の失敗談を聞かせてあげよう。ソラーレ少年はきっと気に入るはずだよ」  「そうなの?」   「ああ、そうだよ」   ソラーレ少年が座っているテーブルから離れてオレンジ色の本を取りに行く。置き石として使っている3分の1が欠けているヒスイを下ろして本を手に取る。   ソラーレ少年はアイスティーを美味しそうに飲んでいた。   「まずはじめに、生ハムという食べ物がどうやって作られているかについてから話そう。それを知っていないと、英雄の失敗談は分からないからね。生ハムを作るにはまず――
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