La storia degli altri

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La storia degli altri

  夜が明けても騒がしかった居酒屋の2階の宿で、男は頭が割れそうな程の頭痛に襲われた。   (二日酔い、じゃない……? なんだ、この痛み)   男ははじめ、二日酔いだと思った。軽い頭痛だったからだ。水を飲めば治ると立ち上がったが、それからすぐに酷い頭痛になってしまった。男は耐えきれず、床に倒れ込んでしまう。   「床が、冷たい……」   体は床が冷たく感じる程にどんどんと熱を帯びていった。男は身の危険を感じ、近くにあった丸テーブルを掴んで立ち上がろうとした。だが体に思うように力が入らず、丸テーブルを巻き込んでまた倒れた。  『カタン』   男が倒した拍子に何かが落ちてしまったようだ。伸ばしていた右手のすぐ近くで床とぶつかり、軽い音が鳴る。   「――?」   男は片手で頭を抑えながらもう片方の手で音が鳴った場所を手探りで探す。男の目は頭痛のせいで目の焦点が合っていなかった。   「これ、か?」   男が見つけたのは小さな緑の欠片だった。見覚えは無い。   「石の欠片? でも何のために……。それに、この、は――?」   男は緑の欠片から何かの映像を受け取った。それは『誰か』の視線からで、声は聞こえない。『誰か』と机を囲んでいるその仲間達のような人間が、話に夢中になっている映像だ。   「誰だ? 何故声が聞こえないんだ?」   緑の欠片から見せられた映像には音が無かった。だが、『誰か』の考えている思いは頭に響いていた。周りの仲間達は熱心に聞いて頷いている。ならばこれは『誰か』の思いがその口に乗せられて仲間達に届いているのだろう。   男は『誰か』の1番大事な思いが出てきたとき、それを口に出した。   「――俺は、あんた達と出会った街の郊外で魔法石を使った喫茶店を作りたい。店の名前は『ライトの魔法喫茶』だ。昔からの夢なんだ。それぐらい、叶えさせてくれるだろ? ・・・・・」   映像はそこで途切れた。男は緑の欠片を見つめるが、この続きはいくら待っても見ることは出来なかった。   「――ライトの魔法喫茶(ライト・マジーア・バル)」   『誰か』は男の名前を呼んだが、その名前を口に出すことは出来なかった。代わりに口に馴染んだのは、『誰か』の名前であるだった。   この気持ちになったのは何故だろうか。それは男にも分からないことであった。   「そうだ。が代わりにこの店を作ろう」
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